芸能

追悼・菅原文太 先輩だった高倉健との「本当の仲」(1)くすぶっていた時代に健さんと出会った

20141218c1st

 文太のわずか18日前にこの世を去った高倉健(享年83)は任侠映画全盛時代、常に文太の「前を走っていた」スターだった。しかし演じたのは同じ極道でも、健さんがもっぱら任侠精神の権化のような「美しき」役柄だったのに対し、文字通り「仁義なき」極道役が多かった文太。俳優として先輩に追いつき追い越そうとするハングリーさとダブって見えるが、健さんとの「本当の仲」に、知られざるエピソードで迫る。

 昭和8年(1933年)8月16日、仙台で生まれた菅原文太は高倉健より2歳下、ともに遅咲きの大スターには違いないが(文太のほうはさらに遅い)、2人の軌跡はだいぶ違っている。

 文太は早稲田大学中退後、ファッションモデルを経て、昭和33年(1958年)、「白線秘密地帯」で新東宝からデビューした。ちなみに菅原文太は本名。モデル時代は“ファンファン”こと岡田真澄と一緒で、ファッションショーで彼が舞台に登場すると女の子たちから「キャアー」と黄色い声が挙がるのに、

「次は菅原文太」

 と紹介されると、一斉に失笑が起きた──と、文太は後年コボしている。

 新東宝時代は吉田輝雄、寺島達夫、高宮敬二とともに“ハンサム・タワー”(文太は身長180センチの健さんより少し低い176センチ)で売り出したが、あまりパッとせず、昭和41年、新東宝の倒産によって松竹に転じた。「血と掟」「男の顔は履歴書」などの出演で知りあった安藤昇の紹介で、東映に移籍したのは昭和42年秋のことである。もっぱら松竹で撮っていた安藤昇が、“任侠映画のドン”俊藤浩滋プロデューサーにスカウトされ、東映で初めて「懲役十八年」(昭和42年2月、加藤泰監督)を京都撮影所で撮るとき、安藤から、

「おう、文ちゃん、遊んでるんなら一緒に京都に行かないか」

 と誘われ、気軽についていったのが始まりだった。

 京都で安藤のマンションに居候し、撮影所にもくっついていくうちに、俊藤が文太に目を留め、

「クスブっているんなら、うちに来るか」

 と声をかけられ、

「ぜひお願いします」

 という話になったのだった。

 文太の記念すべき東映初出演は、高倉健の御存知「網走番外地」シリーズ10本目の同「吹雪の斗争」(昭和42年12月、石井輝男監督)であった。

 文太も「網走番外地」シリーズは好きで、よく観ており、つねづね、

「ああ、オレもこんな映画をやりたいなあ」

 と思っていた。その「網走番外地」が東映初出演であったから、文太にすれば、感慨も新たなものがあったろう。とはいえ、文太の役は網走刑務所で健さんを目の仇にする同房の牢名主の手下役で、ポスターに名前も出ないチョイ役だった。

 すでに高倉健は「網走番外地」シリーズばかりか、「日本侠客伝」「昭和残侠伝」という大人気シリーズの主役を張って、鶴田浩二と並ぶ東映任侠映画路線の二枚看板、大スターの座を不動のものにしていた。

 いまだ鳴かず飛ばず、くすぶっている文太からすれば、仰ぎ見るような存在である。

 2人は東映東京撮影所で初めて顔を合わせた。高倉健は誰に対しても腰が低かった。関係者から文太を紹介された健さんは、文太に対しても、

「高倉です。よろしくお願いします」

 ときちんと腰を折り頭を下げた。これには文太もびっくりし、

「こりゃ、他のスターさんとは全然違う」

 としみじみ感じいってしまったという。

 だが、ここまで差が開いたところから健さんの高みにまで駆け昇っていくのだから、文太も凄かった。

◆作家・山平重樹

カテゴリー: 芸能   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
2
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
3
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」
4
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか
5
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」