芸能

追悼・菅原文太 “未公開肉声”ドキュメントから紐解く「反骨の役者人生」(8)東映時代のギャラ事情

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 松竹のときに比べ、ギャラもはねあがったが、これは文太の作戦が図に当たった結果だったという。

「松竹では20万だったけど、東映の担当が、『菅原さんは松竹でギャラはいくらでしたか』と言うから、これは正直に言うとダメだと思ったので、松竹の橋本さんという宣伝部長──オレをかわいがってくれたんだよ──そこへ訪ねていって、『東映にギャラの書類を出さないかんから、倍ぐらいにしといてくださいよ』と言ってね(笑)。そしたら『わかった』と倍の40万だというふうに作ってくれたんだよ。それ持っていって、『私は40万でした』と言ったら、『ずいぶん高いな』なんて言われてね(笑)。それでも『まあ、それじゃ、それで』となって、そこからスタートですよ」

 昭和42年、大卒の公務員の初任給が2万5200円ということからすれば破格であろうが、文太はこのとき34歳、かつて新東宝時代には吉田輝雄、高宮敬二、寺島達夫とともにハンサムタワーズで売りだし、脚光を浴びたスターのギャラにしてはシブすぎではなかろうか。

「だから、ギャラが上がるったってね、それから主演を何本か撮ると、まあ、20万上げてやるかとなり、そのうちに100万になり──ということで、結局『仁義──』では200万ぐらいにはなったよなあ」

 とは文太の述懐であったが、それにしても、「仁義なき戦い」の主役を張った大スターのギャラがわずか200万円とは意外や意外である。

 ともあれ、文太は「極道」以降、たて続けに東映作品に出演、昭和43年は「極道」に始まり、「前科者」「怪猫 呪いの沼」「極悪坊主」「兄弟仁義 逆縁の盃」「兵隊極道」「ごろつき」「緋牡丹博徒 一宿一飯」「極悪坊主 人斬り数え唄」「博徒列伝」と、この年だけで10本、大きな役ばかり。このうち半分は若山富三郎主演作品だ。

 当時、東映の東京撮影所所属の俳優として、若山富三郎の付き人をしていた人に竹垣悟氏がいる。氏はその頃の文太を知る一人だ。

「その頃、菅原文太という人は、若山作品に出演が多かったせいか、若山富三郎にかわいがられ、山城新伍とともに若山一家の客分というか代貸クラスという感じでしたね。菅原文太はスター、私はといえば、大部屋のしがない仕出し専門の役者で、向こうは雲の上の存在ですが、撮影所で何度か一緒になったことがあって若山さんから、『文太にコーヒーを持っていってやれ』と言われて、ポットに入ったコーヒーをよく持っていったもんです。気どらない気さくな人でね、『おっ、ありがと』なんて、よく声をかけてもらいましたよ」

 この竹垣氏、東映俳優を1年あまりで辞めた後は、故郷の姫路に帰って地元の山口組竹中組の門を叩いたという変わりダネ。極道の世界に身を投じ30年以上渡世を張って斯界でも相当いいところまで行ったのだが、平成17年(2005年)、山口組系組織から破門状を出されるとカタギになって出直し、姫路でNPO法人「五仁會」を設立。「暴力団員と犯罪者の自立更生支援」などを事業目的に掲げて活動、今年9月、その功績が認められて作田明賞を受賞した異色の人物。

 氏がこう続ける。

「文太のことで憶えているのは、顔が腫れていたか何かしたんでしょう、撮影所で曽根晴美に、『文ちゃん、その顔どうしたのよ?』と訊かれて、『おっさんがいきなり殴ってきてこのザマだ』と答えていたことです。『おっさん』というのは若山のことでね、何でも文太が二日酔いで撮影に来てたことが、酒を一滴もやらない若山には気に入らなかったらしい。菅原文太に対する私の印象は、数多くいた役者の中でも、やはりファッションモデルだけあって、そのスタイリッシュぶりはひときわ目につきましたね」

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