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「昔のヒット作」新シリーズが日本ではもうウケなくなったワケ/大高宏雄の「映画一直線」

 米映画のシリーズものの新作が、やけに多い。昨年末からでも「エクソシスト 信じる者」「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」「オーメン:ザ・ファースト」と続いた。そして「猿の惑星/キングダム」が公開され、5月31日から「マッドマックス:フュリオサ」(1作目は豪映画)が待機中である。

 では、なぜ多いのか。大きな理由のひとつが、企画の貧困である。今に始まったわけではないが、米映画の興行では、新たなタイトルのヒット作がなかなか生まれない現状が長く続いている。

 そこで、ある程度知れ渡ったシリーズものの登場ということになる。収益の安定感の確保である。配信など、映画館以外の映像インフラでの活用も視野に入る。その際、知名度の高さは作品強化の一端にはなる。

 といっても、米国本国ではともかく、日本においては、もはやそれらのシリーズもので多くの観客を呼ぶことは難しくなっている。事実、前記の3作品「エクソシスト」「ゴーストバスターズ」「オーメン」は興収5億円に届いていない。

 シリーズものの新作といっても、様々なバリエーションがある。ここでは説明はしないが、重要なのは、そのタイトルに新鮮さを感じない人たちが増えているということだ。そもそも、タイトルを知っているのかどうか。日本で特にその感を強くする。

 それが何を意味するのかといえば、観客の高齢化である。かつて、それらのタイトルの作品を面白がった世代を中心にした観客が、興行の大部分を占める。当然、若い観客は少ないので、数字は伸びていかない。

 ただ、興味深いこともある。先の5作品のシリーズものが、最初に製作された年代である。1960年代から1980年代に製作された作品ばかりが並ぶ。米映画に、溢れるような活気があった時代だ。

 その時代への、米映画界の強いこだわりが感じられてならない。収益の安定性といった、産業的な枠組みを超えたものがあるのではないか。マーベルコミックスやDCコミックスなどのアメコミの実写映画化とはまるで違った印象、肌触りがある。

 米映画のシリーズものに、懐疑的な面があった筆者だが、このこだわりを単純に無下にしてはいけない気がしてきた。米映画の数十年にわたる継承の形が、映画製作の技術力向上を介して、執拗に模索されているのではないか。

 先の1本、「猿の惑星/キングダム」が、その大きな成果だったと思う。主人公(猿)のノアが、変わりゆく世界に堂々と向き合い、自身の行く末を見定めていく話の展開にはワクワクさせられた。ただし、情けないことに、映画のその熱い志は全く伝わってはいない。

 継承の形とは、過去の遺産をいかに生かし、複雑極まる今の時代と、どのように折り合いをつけた中身を構築できるか。そこが勝負どころだろう。成功、不成功もあろうが、期待の一端は残しておいていいのではないか。日本映画にも、全く同じことが言える。

(大高宏雄)

映画ジャーナリスト。キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。新著「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2024年には33回目を迎える。

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