スポーツ

松井秀喜「逆襲のフルスイング」(4)

ちらついた「引退」の二文字
「浪人生活」が長くなるなるにつれ、周囲からは「引退」の噂もささやかれていく。
 巨人時代を知る日本の関係者から「引退」の二文字が口に出されたのは、この頃だった。その根拠は2010年1月1日付のスポーツ報知での“告白”だ。09年─10年オフといえば、松井はワールドシリーズMVPに輝いた。同紙は同年日本シリーズMVPの阿部慎之助との対談を企画し、松井は自身の引退について、こう答えていた。
「どこからも必要とされなければ、引退するしかない。引退は自分の基準ではない。いかに自分がチームの力になっているかどうかで判断する。俺がいて、ただ迷惑なだけとか、力になれないなと思われているのなら、もうやらないな。数字を残していても・・・」
 2年を経て、まさにその言葉どおりになったと、関係者のみならず周囲の誰もが判断したのだ。
 引退カウントダウン・・・。
「今もメジャーを目指すことに変わりはない」
 松井とのメールのやり取りを父・昌雄は、地元紙に明かした。それが松井が出した答えだった。もうこの時点では、故障者を抱えたメジャー球団しか入団の可能性は残されていなかったが、松井の闘争心はまだ消えていなかったのだ。
 その願いはレイズに届いた。レ軍のジョー・マドン監督は25人のベンチ入り要員を使いきるくらい、試合序盤から代打を使う戦術に長けている。過去4年のレギュラーシーズンで平均127通りの「日替わり打線」を編成してきただけに、松井はその勝負強さから「クラッチヒッター」(チャンスに強い打者)と称されてきた。指揮官からすれば「使ってみたい選手」のはずだ。
 さらに、このタイミングでメジャーに昇格すれば、松井にとって絶好のチャンスとも言える。松井はこうも称されている。「セカンドハーフ・ヒッター」
 つまり、後半戦に強い選手という意味だが、言い換えれば、「スロースターター」でもある。
 レイズは松井獲得後も補強を続けており、後半戦まで「スロースターター」の松井を待ってくれない可能性もゼロではない。
 4打数無安打に終わった22日の試合後、松井はティーやマシンでの打撃練習を行った。誰の指示でもない。巨人時代から変わらずこなしてきたルーティンである。
「打球が野手の正面を突いているだけ。悲観しなくても・・・」
 現地入りした日本人メディアからはそんな声も聞かれた。寡黙にバットを振るベテランの背中は、若い3Aの選手の胸にも響くものがあったはずだ。

カテゴリー: スポーツ   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
JR東日本に続いて西と四国も!「列車内映像」使用NG拡大で「バスVS鉄道旅」番組はもう作れなくなる
2
【ボクシング】井上尚弥「3階級4団体統一は可能なのか」に畑山隆則の見解は「ヤバイんじゃないか」
3
これはアキレ返る!「水ダウ」手抜き企画は放送事故級の目に余るヒドさだった
4
舟木一夫「2年待ってくれと息子と約束した」/テリー伊藤対談(3)
5
リストラされる過去の遺物「芸能レポーター」井上公造が「じゅん散歩」に映り込んだのは本当に偶然なのか