エンタメ

早世のマドンナたち④ テレサ・テン 「日本の父」が憤怒した突然死の真相(2)

涙した営業先での「お酌接待」

〈愛は誰にも 負けないけれど 別れることが 二人のためよ〉

 つい先日、NHKで再放送された「歌伝説 テレサ・テンの世界」で白眉だったのは、85年12月のコンサートで歌った「空港」だった。シンプルな歌詞ではあるが、テレサの伸びのある高音で情感たっぷりに歌われ、物語の奥行きを何重にも深めている。

 この曲こそが、デビューから4カ月後に放った“勝負曲”だった。作曲は筒美京平から猪俣公章に代わったが、作詞は前作と同じ山上路夫である。

「曲は演歌調になるが、歌詞は国際的な感じにしてほしいという注文でした。西洋映画のように、男がどこかへ行ってしまう‥‥となると『空港』が舞台になりましたね」

 74年7月1日に発売された「空港」は、17万枚を超えるヒットとなり、年末の日本レコード大賞でも新人賞に選ばれた。舟木は、新人賞を心から喜ぶテレサの姿に胸をなで下ろした。望んで日本に来たとはいえ、やはり、文化の違いにとまどいもあった。

「テレサが最もショックだったのは、クラブ営業などで酔客に絡まれること。香港や台湾は舞台と客席が離れているが、日本は客席を回って歌うことも多い。また地方では関係者にお酌をさせられたことにも泣いて訴えてきた」

 テレサは「私は歌うために日本に来た」という一念だったのだ。

 ちなみに新人時代のテレサは、月給50万円だった。日本の新人と比べれば格段に好条件だが、それでも来日前には10倍近い金額をもらっていたという。

 やがてテレサは、ぷつりと日本に来なくなった。正確には「来れなく」なったのが、79年2月に起きた「パスポート事件」である。テレサの本籍である台湾は、当時、戒厳令下にあったため、日本への入国も台湾からの出国も手間がかかった。そのため、たまたまインドネシア政府が発行していたパスポートを使っていたが、これが入国管理法違反となり、「国外退去処分」となった。

「それでテレサはアメリカに渡り、サンフランシスコやロスアンゼルスで学校に通った。こちらからロスまで行ってレコーディングしたこともありました」

 日本での表立った活動は休止したが、台湾や香港での人気は過熱する一方だった。やがて中国大陸でも異常なまでのブームとなったが、当局はテレサの曲を「精神汚染」「黄色歌曲」として追放キャンペーンを張る。それでも、と舟木は言った。

「テレサの歌を聴きたいがために、中国から台湾に亡命した軍人もいたぐらいでした」

 こうした人気の広がりもあり、テレサのレコードは累計で1億枚を下らないと言われる。中華圏では海賊版もおびただしいため、実際は天文学的な数字になるだろう。

 そして84年1月、5年ぶりの再来日が許可されたテレサが歌ったのは「つぐない」だった。以来、作詞・荒木とよひさ、作曲・三木たかしのコンビは立て続けにテレサの大ヒット曲を作る。「僕の人生観はテレサに『つぐない』を書いたことで変わった。これで作詞家として一生、書いていけると思った」

 今では日本作詞家協会の副会長を務める荒木とよひさの弁である。

カテゴリー: エンタメ   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
JR東日本に続いて西と四国も!「列車内映像」使用NG拡大で「バスVS鉄道旅」番組はもう作れなくなる
2
【ボクシング】井上尚弥「3階級4団体統一は可能なのか」に畑山隆則の見解は「ヤバイんじゃないか」
3
これはアキレ返る!「水ダウ」手抜き企画は放送事故級の目に余るヒドさだった
4
舟木一夫「2年待ってくれと息子と約束した」/テリー伊藤対談(3)
5
また出た!広島カープに「ベテラン選手の不倫デート発覚」下半身コンプライアンス崩壊