社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「睡眠不足解消のための“寝だめ”は意味がある?脳へ十分な休息を与えるための質のいい睡眠とは」

 いよいよ春を迎えようとしています。「春眠暁を覚えず」ということわざがあるほど、つい朝寝坊をしがちな季節でもあります。

 昨今、睡眠不足になる人の割合が増えているようです。ちまたでは「睡眠負債」と呼ばれており、1日3~4時間しか寝られない人も少なくありません。ではここで質問です。休日に「寝だめ」をするべきでしょうか。それとも目が覚めた時点で起きるべきでしょうか。

 仕事のない休日こそ、ゆっくりと布団にくるまっていたいというのは人情でしょう。しかし実際には、体のリズムを考えると、無理してでも起きるべきです。なぜなら、睡眠負債を解消するべく休日に寝だめをするのも一つの方法ではありますが、寝だめは疲れを取ってはくれません。

 人間の体のリズムは、起きてから16時間後に眠くなるようにできています。ですから日曜日の正午に起きてしまうと、眠くなるのは月曜日の朝4時となってしまいます。となると、朝8時に起きている人は「日曜日から月曜日」の睡眠時間を4時間ほどしかとることができません。こうなると1週間のスタートに支障を来すばかりか、体調不良や倦怠感を覚える「ブルーマンデー」となりかねません。

 そこで、休日の日曜日でも朝6時に起きれば、16時間後は午後10時となります。これは以前の連載でも指摘したとおり、深い眠りにつながる「夜10時から深夜2時までのゴールデンタイム」内に就寝することで、月曜日のスタートが上手に切れます。

 睡眠時間には“法則”があります。睡眠時間そのものは人によって異なるものの、体と脳が深く眠った状態の「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」を交互に繰り返します。

 この繰り返しは1セット約90分間隔のため、「睡眠時間」は90分の倍数で考えるべきです。例えば、この睡眠セットが4回ならば6時間、5回なら7時間半となります。つまり、6時間ないしは7時間半の睡眠時間が脳にとって最も効果的であり、12時間以上睡眠をとると起床後もだるさを感じるはずです。徹夜をした翌日なら、いつもより長めに寝てもいいでしょうが、通常は平均的な睡眠時間をオーバーするべきではありません。布団に入って7~8時間後にはパッと起きてください。

 レム睡眠中の脳は起きている時以上に活発に動いています。レム睡眠が過剰に増えると脳が十分な休息をとることができず、かえって疲れやすくなってしまうのです。脳の疲れを癒やす「深いノンレム睡眠」をしっかりととることさえできれば60~70%は疲労回復できます。

 また、睡眠時間が9時間以上の人は認知症になりやすいとの説があります。研究により、長時間の睡眠は脳を老化させ、記憶力と意思決定能力が下がることがわかっています。他にも、長時間布団に横になっていることで体の血流が悪くなり、脳に十分な酸素と栄養が行き渡らなくなってしまうことも認知症の一因とも言われています。

 どうしても慢性的に睡眠不足の人は、可能なら15時までの間に15分から20分ほど昼寝をすることをオススメします。そうすれば、睡眠負債は和らぎます。睡眠負債に対する「先取り返済」と考えてください。さらに、眠れないからといって、お酒を飲んで寝る人も少なくないでしょう。しかし、寝てからもアルコール分解を余儀なくされるため、体を休めてはくれません。寝酒もやめたほうが、いい睡眠がとれるでしょう。

 短時間の睡眠時間を余儀なくされると、休日は眠れるだけ寝たくなりますが、それでも必ず目は覚めます。目が覚めたその瞬間こそ、自分の体に合った睡眠時間なのです。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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