日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題で、複雑な内部事情も見えてきた──。
5月29日に開かれた関東学生アメリカンフットボール連盟の臨時総会で、タックルを指示したとされる内田正人前監督と井上奨前コーチは除名処分とすることが決められた。その内田氏と井上氏は5月23日に前日のタックルをした選手の会見を受ける形で釈明会見を開いたが、「『潰してこい』の言葉の解釈が乖離していた」なる説明は、むしろ反感を増大させた。そして、5月25日の日大・大塚吉兵衛学長が緊急会見も遅きに失した感は否めなかったが、
「日大は他校に先駆け、危機管理学部を2016年4月から設けました。危機管理の専門教諭がいるのに、日大は会見を開くたびに、まったく危機管理できていない姿を露呈して、信用を失っています」(テレビ局スタッフ)
その危機管理学部だが、実は、「官僚の天下り先」と言われても仕方のないような教諭構成になっていた。まず、10人の教授がいて、うち6人が東大卒というエリート。学部長の教授は日大卒だが、あとは警察庁、法務省、防衛省、国土交通省のOBばかり。パッと見ただけでも、山梨、熊本、埼玉で県警本部長を務めた金本泰介氏、元埼玉県警本部長・茂田忠良氏、元入国管理局長・高宅茂氏、元東北公安調査局長・安部川元伸氏らがいて、まさに、「霞が関、桜田門に太いパイプを持つ学部」だ。この官僚ルートに高を括って、悪質タックルの問題を軽視したとは思いたくないが…。
「危機管理学部を立ち上げるにあたって、水面下で動いていたのが田中英寿理事長でした。内田前監督の上司です」(関係者)
田中理事長はかつて、学生横綱などアマチュアタイトルを総ナメにした猛者で、大翔鳳、舞の海らを育てた同大学相撲部の元監督でもある。スポーツ出身の異例の理事長であり、味方も多い反面、敵も少なくないそうだ。そんな理事長ではなく、学術畑出身の大塚学長が緊急会見を開いたということは、学内クーデターの幕開けも意味していたのかもしれない。
エリート教授たちがそろった危機管理学部は、後手にまわった今回の不手際を“生きた教材”とすべきだろう。
(スポーツライター・飯山満)