スポーツ

「夏の甲子園第40回大会」ダークホースの柳井が山口県勢初V

 甲子園では、大会前にはほぼノーマークだったチームが快進撃を見せ、旋風を巻き起こすことがある。今大会も前評判はさほど高くなかった下関国際(山口)が2012年の宇部鴻城以来6年ぶりに県勢として3回戦進出を果たし、伏兵的存在となっている。

 その山口県勢は夏の選手権でただ1度だけ、全国制覇を果たしたことがある。1958年第40回大会の柳井である。

 今回の下関国際同様に、大会前にはほとんど存在が注目されていなかったが、初戦の札幌商(現・北海学園札幌=北海道)戦でエースの友歳克彦(法大─日本石油)が好投を見せ、2安打完封。打線もミート打法中心の短打を重ねる攻撃で計7安打、2点を挙げ、2‐0で勝利し、波に乗ったのだった。

 続く2回戦の鳥取西戦も接戦となった。試合は3回裏に柳井打線に連打が飛び出し貴重な1点を先制。これを友歳の好投と野手陣の好守で守り切った。友歳の被安打はわずか2本。1‐0の辛勝だった。

 3回戦も宮崎大淀(現・宮崎工)とのシーソーゲームとなった。1回裏に柳井が1点を先取すると4回表に宮崎大淀も1点を取り、同点に。だが、柳井は6回裏に1点、7回裏に2点と短打を重ねて小刻みに追加点を奪っていった。8回表に相手打線の反撃に遭い2点を返されたが、最後は友歳が何とか1点差を守り切り、4‐3で逃げ切ったのだった。

 こうして柳井は苦戦続きながらあれよあれよという間にベスト8へと進出。準々決勝の海南(和歌山)との試合も双方がしのぎを削る白熱した好ゲームとなる。柳井は3回までに3点と、この大会初めて相手にリードを許す劣勢の展開となったが、3~5回にかけて各1点ずつを取り、同点に追いつく。さらに7回裏に集中打で1点を奪い、ついにリードすることに成功。投げては4回以降、海南打線を無得点に封じた友歳の好投で、最後までこの1点のリードを死守したのである。友歳は被安打6の完投勝ち。またも4‐3という辛勝である。だが、3試合連続して1点差試合をものにしたことで、粘りが柳井の本領となっていた。

 この粘りは準決勝の高知商戦でも発揮され、四国の強豪相手に柳井は友歳が好投。投手戦に持ち込んだのである。柳井打線も高知商のエース・森光正吉(元・阪神)の前に7回まで手も足も出ない状態だったが、8回裏に棟居英二に殊勲のタイムリー三塁打が飛び出し、決勝の1点を挙げ、1‐0で勝利。ついに決勝戦へと進出することとなったのだった。

 決勝戦の相手は、この大会5試合で80奪三振の大会記録を打ち立て、超高校級左腕と謳われた板東英二(元・中日)擁する徳島商だった。だが、この日の板東は準々決勝での球史に残る魚津(富山)との延長引き分け再試合の疲れがあったのか、球に球威がなかった。柳井は2回裏に1死からの連続安打と2つの四球、さらに右前適時安打で3点の先制に成功。さらに4回裏に1点、8回裏にも3点を加えて試合を決定づけたのである。柳井の各打者は大振りせず、選球眼も確かで計14安打を放つ猛攻ぶり。投げては友歳が横手からシュート、上手からのカーブを巧みに決め、徳商打線をわずか4安打に抑え込んだ。この大会最後の試合で7‐0と初めて圧勝したのであった。接戦続きだっただけにこの柳井の優勝は“番狂わせの優勝”とも言われたが、バットを短く持って鋭く当てる。バントも確実に決め、点を重ねる。好守で友歳を盛り立てる。まさにチームワークでつかんだ栄光であった。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
ラモス瑠偉「W杯惨敗サッカー日本代表コキ下ろし」に抗議電話15万5000件/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
2
「趣味でUber Eats配達員をやってる」オードリー若林正恭に「必死の生活者」が感じること
3
「キスしてる?」質問にフジテレビ・井上清華が衝撃「赤面もじもじ返答」の「まさか!」
4
桑田真澄に「偉業を全て盗まれた」同級生の元バッテリー捕手が明かす「ほとんど完全試合」時代
5
落合博満が「何の連絡もない」と困惑する「中日OB戦オファー事件」の舞台裏