日に日に成長を遂げている菜七子騎手だが、大きなレースで勝つためには、技術、レースの流れや馬場状態などの判断力はもちろん、藤田菜七子ならではの“経験”を積んでいくことも必要なようだ。小林オーナーも次のように話す。
「以前、コパノビジンで、どうしても勝ちたいレースがあった。その時、内側で包まれて脚を余して負けちゃった。レース後、彼女に言ったんだ。『菜七子、(ここに)いまーす!』って、なんで叫ばないんだって。彼女にポジションを主張されたら、僕だったらあけちゃうよ(笑)。それぐらいの茶目っ気を見せてもいいと思うんだよね。
逃げる時でも『菜七子、行きまーす!』って宣言したりして。で、負けて戻ってきて『アピールしてみたんですけど、ダメでした』なんて報告されたら、誰でも納得しちゃうよね(笑)。もっと明るく、華やかにふるまってもいいんじゃないかなって思うんです」
プロ野球の始球式に呼ばれた時は、3週間も前から厩舎の裏で練習していたぐらい努力家で負けず嫌いの菜七子騎手だが、スポーツ紙デスクは別の側面について、
「お母さんによると、実はサザエさんみたいにそそっかしい面もあるそうです。トレセンでは常に気が張っているので、そうした一面は見られませんし、彼女にしても、女性騎手として見られたくない気持ちが強いのかもしれません。ただ昨秋、GIトレーナーの一人が『平場戦での負担重量はずっと3キロ減でいいんじゃないか。これだけ人気があって貢献しているし。欧州では女性騎手は通年2キロ減という国もある』という話をしていました。もし日本もそうなれば、もっと活躍できると思いますよ」
海外の女性騎手の負担重量について、競馬ライターの秋山響氏が話す。
「フランスの女性騎手は17年3月1日から2キロ減(ただし準重賞、重賞など上級レースは除く。それでも全体の9割ほど)でしたが、今年の3月1日からは1.5キロ減に縮小されました」
ただ、フランスの騎手は約600人いて、うち100人ほどが女性。日本の状況では難しそうだが、小林オーナーの見解はこうだ。
「アスリートだから男女差があってはいけないのだろうけど、牝馬と牡馬でハンデ差があるように、騎手にないのはおかしいなって、実は思っている(笑)。後輩の女性騎手が続く予定だし、将来的にはやるべきじゃないかな。ハンデのある平場戦で、女性騎手ボックスの3連単なんて、オッズも高そうで、夢があって楽しいよね」
夏競馬最終週には、土日で18鞍の騎乗依頼があった菜七子騎手。実戦でさらに腕を磨き、GIに騎乗できる日を心待ちにしたい。