塀の中では思わぬ“逆療法”も。今回の「ヤクザ式」において、避けて通れないアンチエイジング法が、長期にわたる刑務所服役プログラムだ。
「裏社会では、『懲役に入った年数分だけ時が止まる』と言われています。かつて20年の刑期を務めた70歳の人なら、50歳に見られる。不摂生な生活から一転して規則正しい生活を送り、お酒も飲まないし、本当は不正運動になるのでダメですが、筋トレで鍛えて出てくる人もいます。刑務所の食事も昔は臭い飯だと嫌悪されていましたが、今は臭くない。それどころか、同じメニューの玄米でも栄養が豊富なので、自然と若返りやすい環境になっているのです」(上野氏)
禁酒と粗食によって健康体になったはいいが、食事の量自体が少ないせいで、出所する時には痩せすぎてしまう場合もあった。
「マスコミに注目されている組長の中には、痩せた姿の写真を撮られるのが嫌で、療養したことにして体形をもとに戻すまで写真を撮らせるのはやめるという話もあったんです。ただ、療養となると、今度は健康不安説が広がるおそれがあるので、結局、撮影NGにはしなかった」(ジャーナリスト)
シャバに戻ってからの食事も重要になってくる。では、ふだんはどんな食生活を送っているのか。ジャーナリストはこう話す。
「組事務所によっては板前修業をした組員に作らせているので、親分の好みに合わせて本格的な料理が出てきます。ある組長は値段を度外視して、とにかく『旬の初物』にこだわり、どの野菜がいつどこで出荷されるのか把握していました。料亭で食事をした時、お店側が気を遣って初物のナスを出してくれたのですが、親分はその味が気に入らず、知り合いの八百屋さんに電話をして夜中に持ってこさせたのには驚きましたね」
初物七十五日──初物を食べると寿命が75日延びると言われているが、忠実に実践するには金と人脈が不可欠のようだ。
さて、金に糸目をつけない親分の食卓とは多少異なり、若い衆は格闘家さながらに栄養面を重視しているようだ。
「筋肉を作るためにタンパク質を多く摂取できるサラダチキンを食べたり、事務所に置いてあるプロテインを飲んでいます。それでも若い衆は独特な体型をしているのも特徴的で、大胸筋や上腕はゴツイのに、おなかだけやたら出ているんです。食生活をコントロールしようと思っても、親分に呼び出されたら同じものを食べないといけないので、1日に3食以上食べることも珍しくありません。お酒も断れないのでシャープで引き締まった体にはなりにくいのです」(上野氏)
さらに、健康志向の若い衆にとって、事務所当番の時にもらう「差し入れ」に苦しむこともある。
「出入りする親分が、『お疲れさま』とただ声をかけるだけではカッコがつかないので、おにぎり100個とか、シュークリーム200個といった具合に大量に差し入れしてくるんです。事務所当番は10人くらいしかいないのに‥‥。そのまま置いておくわけにはいかないから、毎回吐いてでも食べ切るそうです」(ジャーナリスト)
子の心、親知らず。