政治

田母神俊雄が教える「紛争が戦争に変わる瞬間」(2)戦争開始までに3カ月は必要

 なぜ中国の艦艇が、ここまでの挑発行為を行ったのか、考えてみましょう。

 近年、中国は漁師らを尖閣に上陸させたかと思えば、漁業監視船や海洋監視船を我が国の領海に侵入させています。また、頻繁に領空侵犯を行ったあげく、今回のように火器管制レーダーを照射するなど、しだいに我が国に対する工作をエスカレートさせています。

 これは従前から申し上げているとおり、中国が仕掛けている“情報戦”です。つまり、尖閣の実効支配に対して、譲歩を迫ろうという狡猾な作戦です。火器管制レーダーの電波照射など、毎日世界中で行われており、慌てる類いのものではありません。全てが、中国が日本に仕掛けている情報戦の一環なのです。

 一方、報道の中には「中国軍が勝手に行い、中国外交当局は知らなかった」との論調もありますが、これは当然考えられる事態です。2月5日に日本が発表して以来、中国政府が反論するのに3日間かかったのも、予期せぬ事態の対応に困ったからでしょう。しかし、軍レベルでは完全に指示された行動だと思います。ただ、軍の独断だったのかもしれませんが、いったん公になるや、中国は国家一丸となって情報戦を強化しています。これが、今の中国政府のスタンスです。

 中国国内では「戦争開始だ」などの声が上がっていると報じられていますが、とてもすぐに戦争ができる態勢にないことなど、中国当局がいちばんわかっているはずです。レーダー照射から突然ミサイルを撃ったとしたら、国際社会から孤立し、自分たちの国がいちばん損を被ると中国指導部も判断しているはずです。

 この一件で戦争の恐怖を感じた方もいるかもしれませんが、現段階における中国政府に、戦争の意思などないことは明白です。

 本気で戦争を考える場合、少なくとも3カ月から半年ぐらいの準備が必要です。有事が近い場合、国内の動きは間違いなく通常と変わります。例えば、戦闘機の配置を変えたり、戦艦を集結させたりします。あるいは後方支援の機材を集めたり‥‥と緊張感に包まれますが、現在の中国にそうした動きはまったくありません。

 平時の体制とまったく同じであり、ニュースに映る中国人の顔つきや言葉にも、戦争が迫っている緊張感など微塵も感じません。また、戦争準備をしているのであれば、電波の通信量も平時と比較にならないほど増えるものです。

 例えば、海上自衛隊や航空自衛隊が、実際の戦闘ではなく総合演習をする場合ですら、相当な準備が必要なのです。ましてや、一国の軍隊が、作戦準備もなしに戦争などやれるわけがありません。

 昨年10月に行われた中国海軍による東シナ海での訓練も、ここ数年では最大規模だったと伝えられていますが、それでも部隊単体の訓練であり、ましてや中国海軍全体による演習など、一度も行われていないのが現状です。

 

 こうした私の意見は、ニュース番組での論調とは異なるかもしれません。なぜなら、ニュース番組やワイドショーには、不安や恐怖をあおることで視聴率を稼ぎたいとの意図があるからです。例えば自衛官出身者でも、テレビ局が求める方向性でのコメントを余儀なくされ、なかなか本音を言えませんが、落ち着いて考えればわかることです。

 我が国も負けずに、中国との情報戦を戦う必要があるのです。

カテゴリー: 政治   タグ: ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
DeNA大型新人・渡会隆輝「とうとう2軍落ち」に球団内で出ていた「別の意見」
2
「趣味でUber Eats配達員をやってる」オードリー若林正恭に「必死の生活者」が感じること
3
桑田真澄に「偉業を全て盗まれた」同級生の元バッテリー捕手が明かす「ほとんど完全試合」時代
4
「3Aで最多安打記録」巨人に新加入の外国人ヘルナンデスに「超不吉なデータ」
5
ラモス瑠偉「W杯惨敗サッカー日本代表コキ下ろし」に抗議電話15万5000件/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」