林先生の講義を受けてみたくなった諸兄も多いだろう。とはいえ、大人が予備校生に交じるわけにもいかない。そんな人のためには林先生の著書「いつやるか? 今でしょ!」(宝島社刊)が便利だ。同書は大人向けの自己啓発本である。
ページを開くと、いきなり「金言」が出現する。
〈挨拶は『誰にでも平等に』しよう!〉
子供が教わるような内容かと思いきや、これが意外と深い話なのだ。深々と頭を下げて挨拶されれば、誰でも相手に好印象を抱く。それだけではなく、挨拶とは〈挨拶をする自分を「世間に」見せる機会〉だと、林先生は説く。つまり、相手だけではなく、挨拶を見ている周囲からの評価もアップするというのだ。打算的と思われないためには、〈誰にでも平等に〉でなくてはならないというわけだ。
さすが、多くの生徒の目にさらされながら、講義をする予備校講師ならではの発想とも言える。
その典型とも言えるのが、次の「金言」だ。
〈目指せ! 柳原可奈子さん!!〉
あのポッチャリ芸人を目標にしろとはどういうことか。
林先生はこう説いている。〈人間は自分の顔は見れない〉。だから、他人に見られている自分の顔が本当の顔である。その本当の顔は仏頂面でいるよりも、表情豊かなほうがいい。〈自然と社会的評価も上がる〉という。柳原がすばらしい表情の持ち主である根拠は、〈勝手に決めつけて〉いるのだが、明日から実践しようかと思えてくるから不思議だ。
マジックのように人を説き伏せる。そして、そこにはみごとに人を納得させる論理的な裏打ちがある。そんな林先生は、やっぱり日本の最高学府である東大法学部の出身。卒業後、長銀(日本長期信用銀行)に就職するが、半年で退職している。
「授業中にも、林先生はその話をしていました。確か、『潰れるのがわかっていたから、辞めてやった』と言っていましたね。本当にその銀行は潰れたからビックリです」(元受講生)
そして、林先生が飛び込んだのが、予備校業界だった。東進の英語アドバイザーとなり、受験生時代に得意科目だった数学講師を目指し、テストをパスする。
ところが、数学講師ではなく「現代文で行きます」と、あっさり転向するのだ。
その理由を著書の中で、林先生はこんな「金言」でつづっている。
〈『勝ち易きに勝つ』道を選べ!〉
孫子の兵法の一説を引用しているのだが、つまりは〈大して努力をしなくても勝てる場所で〉、最大限の努力をすること、だそうだ。
早い話、林先生は他の現代文の人気講師の講義を見て、〈相手は軽い〉と思ったのだという。
それは全て〈成功のイメージを想像〉することから始まっている。合格した自分をイメージすることと同じであり、これを〈逆算の哲学〉と林先生は名付けている。そして、こんな「金言」を残している。
〈5年後の自分を想像せよ!〉