政治

歴代総理の胆力「麻生太郎」(2)政権交代への「戦犯」

 しかし自民党内には、仮に麻生が代わっても、「選挙の顔」となるこれといった人材も不在だったことから、麻生はからくも生き延びた。そうした中で、ようやく辿りついたのが、政権発足から1年近く経った真夏の総選挙。結果は「歴史的大敗」であった。

 このときの自民党の選挙戦を筆者も取材していたが、自民党はなんともヒドイ選挙態勢であった。すでに民主党がマニフェスト(政権公約)を発表していたのに対し、自民党が重点政策などを発表したのは公示が近づいてからであった。いかにもヤル気が疑われる動きである。また、選挙の司令塔の幹事長、選対委員長がそれぞれ勝手に動き、統制もまったく取れていなかった。

 それでは御大の麻生総理はといえば、元々、全国の選挙事情に通じているわけではなく、組織票頼みの自民党支持団体を回って頭を下げるのみであった。一方で、地方での講演で「高齢者は働くことしか才能がない。80歳を過ぎて遊びを覚えても遅い」などの放言である。執行部の一人などは「また地雷を踏んでしまった。もう選挙にはならない」と、投票前日にして“敗北宣言状態”だったのだ。まさに「戦犯」である。

 結果、麻生は退陣を余儀なくされ、政権は民主党に移るという大鳴動となった。その民主党政権は「官僚政治からの脱却」「政治主導」を標榜したが、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦と総理大臣が目まぐるしく代わる中、わずか3年余で政権を自民党に返してしまうのだった。

 その自民党は、第一次政権を投げ出した安倍晋三が第二次政権として復活、以後、麻生は副総理兼財務相として、今日まで安倍内閣の主柱を務めている。いま、実はこんな声も聞こえているのだ。

「自らの政権が“生煮え”で終わっただけに、ポスト安倍選びでは院政を窺っている。しかし、今秋には80歳。本来、政局にはあまり熱心な人でないだけに、出番があるかは不透明そのもの」(政治部デスク)

 こんな見方も少なくない。

■麻生太郎の略歴

昭和15(1940)年9月20日、福岡県飯塚市生まれ。学習院大学政経学部卒業。麻生セメント社長、日本青年会議所会頭を経て、昭和54(1979)年10月、衆議院議員初当選。平成20(2008)年9月、内閣組織。総理就任時68歳。現・副総理兼財務大臣。現在79歳。

総理大臣歴:第92代 2008年9月24日~2009年9月16日

小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。

カテゴリー: 政治   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
巨人初のトレード加入で「4」を付け「33歳で病死」主砲の遺言/あなたの知らないプロ野球「永久欠番」秘聞
2
発生切迫!東京と千葉東方沖で「想像を絶する規模」に/能登半島地震の次に必ず起きる「6つの大惨事」(4)
3
「築地球場」本拠地移転を狙うのは巨人ではなく「西武ライオンズ」という大逆転
4
政府が慌てて調査を始めた「日本海海底大地震」/能登半島地震の次に必ず起きる「6つの大惨事」(2)
5
地殻が水平移動!長野と岐阜の活断層で「内陸直下型」が多発する/能登半島地震の次に必ず起きる「6つの大惨事」(3)