かねてから、若手の台頭が叫ばれていた阪神。そんなチームにもようやくいくつかの芽が出てきました。それが白仁田寛和と秋山拓巳、野手では一二三慎太、それに西田直斗の4人です。
白仁田は9月3日の横浜戦で、6回まで投げきって1失点でプロ初勝利。試合も10対1のスコアで阪神が完勝しました。一方、秋山は今シーズンすでに6試合(9月17日現在)に登板した選手。後半戦からとはいえ、この試合数を見れば、いかに首脳陣が彼を評価しているのかがわかるでしょう。この2人の投手は、来シーズンの阪神の先発ローテの一角を担うかもしれない注目の若手なのです。
中でも秋山拓巳の成長は目覚ましいものがあります。彼の武器は187センチという長身から投げ下ろされるキレのあるストレート。今シーズンはフォーム改造も手伝って、特に腕の振りが非常によくなってきています。僕が思うに、秋山は藤浪と同じぐらいのポテンシャルを秘めた選手。今後、エースとして化ける可能性は十分にあります。
とはいっても、残念ながら彼は6試合を投げながらいまだに勝ち星のない投手でもあります。先発ローテに入るには、まだまだ課題が山積みなのが現実です。
その課題の一つに、ランナーを背負った時の投球があります。彼は長身ゆえに手足が長い。そういった選手はリリースポイントが高い分、ランナーが塁に出た時の機動力への備えが、どうしても遅くなってしまう傾向があります。つまり、相手ランナーからすると非常に走りやすいわけです。それだけ秋山はランナーのプレッシャーを感じやすく、セットポジションが崩れて自分本来の投球ができなくなってしまうのです。
この点については藤浪のほうが、はるかに技術が上です。藤浪はランナーがいても、自分の勝負球をしっかりと相手に投げられるのが特徴です。打たれた時の粘りこそが彼の強みでもありますからね。
もちろん、秋山にも打開策はあります。それはクイックモーションの習得です。ランナーの有無にかかわらず、いかにクイックでコンパクトな投球に努められるか。これができれば、今後の彼の勝ち星につながってくるでしょう。
さらに言えば、彼の最大の欠点は勝運のなさにあります。これは正直、何が原因かとはっきり特定するのは難しい。ただ、勝てないということは必ず何か理由があるのは確かです。投球のリズムなのか、それとも野手との兼ね合いなのか。もしかすると、送りバントといった投球とは直接関係ない部分に隠れているのかもしれません。
とはいえ、彼はプロ4年目でまだまだ伸びしろのある選手。勝負運にさえ恵まれれば、必ず結果が出せる能力はありますから、今はとにかく我慢して投げていくことが重要です。
反対に07年ドラフト1位の白仁田はプロ6年目。年齢も27歳とあとがない分、完成されつつある選手です。彼の特徴はストレートの速さ。そのスピードは阪神の投手陣の中でも随一です。あとは試合経験を積むだけでしょう。そういう意味では、彼に問われるのは自信。毎回の登板でどれほどの覚悟を持って投げられるのかが、今後の彼の成功の鍵となるでしょう。