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楽天田中将大と嶋基宏「黄金コンビ」苦闘7年物語(3)メジャー行きという夢に向かって

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 田中自身、今シーズンに賭けたもう一つの大きな理由があった。それは昨年のオフの契約更改時に遡る。その席上で、「今年、チームのために頑張ってくれるならキミの夢の実現のために我々も協力を惜しまない」と約束されたのだ。

 これで田中のモチベーションは上がった。結果を残せば、ポスティングによるメジャー行きも十分にあると思ったのだ。田中にとっての夢がメジャー行きであることを知らない楽天の球団関係者はいない。それほど、田中はチームに期待を込めたのだ。

 田中の目の色が変わった。まずは体調管理をより徹底するようになった。田中には、高校時代に痛恨の思いがあったからだ。

 夏の甲子園の名勝負としても記憶に新しい対早稲田実業との決勝戦。3連覇がかかった大一番の先発に田中の名前はなかった。甲子園に来る直前、田中はウイルス性胃腸炎にかかり、体調は万全でなかった。気迫の投球で決勝にまで進んだものの、決勝戦も再試合も田中は先発していない。

「少しでも休ませたい」という香田誉士夫監督(当時)の思いがあったからだ。

 その結果、延長15回を戦い抜いて再戦となった試合は、田中がマウンドに立つ前に失点し、それがそのまま決勝点となり1対0で敗れた苦い経験がある。その時、田中はナインを前にして「すまん」と自分の体調が万全でなかったことについて素直に謝った。それが田中の意識を大きく変えた。

「将大はオレと違って、大酒を飲んで騒ぐタイプではない。常に体調面を第一に考えている点ではプロらしい考えを持っている。ただ一度だけだね、札幌で打たれた時かな、『僕だって飲みたい時があるんです』と言ってウオッカを飲んでいた」

 投手コーチの佐藤が唯一見た田中の酔った姿だった。

◆スポーツライター 永谷 脩

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