スポーツ

楽天田中将大と嶋基宏「黄金コンビ」苦闘7年物語(4)心強いオンとオフの“2人の女房”

20131024j

 誰よりも体調管理に気を遣っていた田中に、12年、さらなる味方がついた。里田まい(29)との結婚だった。

 楽天の前監督だった野村は「野球選手の妻として大切な三大要素」として「料理が上手なこと」「明るい性格の持ち主」「外出好きでないこと」をあげていた。里田は、野村が指摘した要素を十分に持っている女性だった。交際中には、アスリートのための食事をサポートするための資格「ジュニア・アスリートマイスター」を取得。結婚後の食生活に生かしているのだ。「早く家に帰ってゆっくり食事をしたい」と言う田中を見るかぎり、野球人の理想の妻と言っても過言ではない。

 また里田は、田中が遠征に出かけている時間を利用して英会話を勉強している、という話が伝わってくるにつけ、将来のメジャー行きの計画について、着々と進行させているように思えるのだ。

 今季の田中がローテーションをきちんと守りながら、中6日の登板をこなしていけたのは、嶋と里田という2人の女房の存在があったからだろう。

 だが、ここまでの道のりには、大きな危機もあった。それは第3回WBCでのふがいないピッチングだった。初戦のブラジル戦では、2回1失点でマウンドを降り、その後、抑えに回ったが本調子にならないままチームが敗退した。そんな田中に対して星野監督は、「お前の兄貴分のダルビッシュはメジャーに行って大きな進歩をしているのに、お前はまだまだ進歩が足りないじゃないか」と、珍しく直接的に声をかけた。この言葉に田中は、「スッキリした」と口にした。監督のハッパが今まで詰まっていた胸のつかえを取り除いたのだ。

 さらに田中の気分を一変させたのは、楽天投手陣たちのねぎらいの言葉だった。

「終わったことをいつまでもクヨクヨしていてもしかたがない。前を向いて頑張っていこう。これで役者がそろった」

 そして、投手陣が勢ぞろいして慰労会を開き、全員が田中に酒をついだ。そんなナインの気持ちに触発され、チームに戻ったとたん、前向きに変わっていったことは確かであろう。

 バッテリーを組む嶋のひと言も大きかった。

「お前一人で苦しむのはよそう。オレたち、皆、仲間じゃないのか」

 田中が振り返る。

「あの言葉を聞いて、嶋さんと一緒に戦っていこうと本気で思った」

 田中が投げる時の嶋は3割6分5厘の高打率をマークしている。これほど心強い相棒はいないと感じたことだろう。

「僕がいちばん信頼している人です。僕が投げる時はよく打ってくれますから」

 と、田中は全幅の信頼を寄せる。

 3試合目の登板となったソフトバンク戦(4月16日)では、7回4失点でマウンドを降りることとなった。これには、内角に思い切り投げないバッテリーに星野監督が激怒。ところが、嶋は「自分が内角を投げさせなかった」と田中をかばったという。のちにコーチから嶋の擁護発言を聞かされた田中は、ますます嶋を信頼するようになっていった。

「今年の将大は、こっちの意図していることを考えて投げてくれる。リードしていて楽しいです。自分が危険を感じたなら、わざとボールにしてくれるし、適当に首を振ってくれるし、すごい投手になりました」

 嶋は田中の成長ぶりをこう表現する。それゆえに優勝を決める登板で、田中は嶋に対して、外角一本の速球で恩返しをしてみせたのだった。

◆スポーツライター 永谷 脩

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「キスしてる?」質問にフジテレビ・井上清華が衝撃「赤面もじもじ返答」の「まさか!」
2
岡田監督と不協和音!阪神・佐藤輝明「怒りの2軍落ち」で問題視された「試合に向かう姿勢」
3
ロッテ・佐々木朗希「日本ハムに3対1の電撃トレード」謎の投稿が激論に!
4
広島・新井良太2軍コーチ「地元女子アナと結婚」までの「夜の歓楽街」寂しい活動
5
「昔のヒット作」新シリーズが日本ではもうウケなくなったワケ/大高宏雄の「映画一直線」