芸能

日本レコード大賞 炎の四番勝負!<第2回>「1978年~沢田研二VSピンクレディー~」(3)

20131212i

「最優秀歌唱賞は‥‥沢田研二!」

 午後8時35分、その瞬間の沢田の表情を、筆者は奇異な感じにとらえていた。大賞に準じる栄誉でありながら、明らかに困惑した照れ笑いを浮かべている。

「去年大きいヤツをもらって、やっぱり軽い感じがします。残念ですが、喜びたいと思います‥‥」

 受賞者が斜に構えたコメントを出すのも前例がない。それでも沢田は対象曲の「LOVE(抱きしめたい)」を、いつものようにドラマチックに歌いあげた。

 沢田は「2年目のジンクス」を阻止するため、78年の年明けから精力的だったと森本は言う。

「1年間、1日も休まずに仕事しようと。歌番組だけじゃなく、バラエティも積極的に出る。例えば『8時だヨ!全員集合』でも僕がいかりや長介さんと何度も打ち合わせて、沢田にどんなコントをやらせようか練っていきました」

 レコード売上げも前年とそん色なく、新曲をテレビで発表するたびに見せ方が大きな話題となる。9月に発売した「LOVE(抱きしめたい)」は、各テレビ局に「画面をセピア色にしてほしい」と依頼した。

 レコ大の下馬評でも「V2は確実」との声が多数を占めていた。これを予選投票の段階では沢田、山口百恵、西城秀樹に次いで4番手だったピンク・レディーが、強烈な“末脚”を見せたことになる。

 そして8時45分、司会の高橋圭三はピンクが歌った「UFO」を最後に読み上げる。アイドルデュオの大賞はもちろん、史上初のことであった。ただ、社長の貫泰夫は冷静な2人を間近に見ている。

「歌謡大賞とレコ大の2つを獲ると鼻息が荒かったのは俺たちスタッフで、本人たちはあまりの忙しさに考えるヒマもなかったと思うよ。受賞の当事者でありながら、蚊帳の外だったと思うね」

 ヒルトンホテルの宴会場を2つつなげての盛大な祝勝会では、日テレのピンク特番と、NHKの紅白が並べてオンエアされている。ピンクが辞退した紅白では、百恵と沢田が「初のポップス勢によるトリ対決」で火花を散らし、大トリを締めくくったのは沢田の「LOVE(抱きしめたい)」だった‥‥。

 翌79年のピンクは、3大球場(西宮・西武・名古屋)のコンサートを実現させるものの、人気降下は明らかだった。そして81年3月31日、空席が目立つ後楽園球場を最後に解散。貫が育ての親である阿久悠に挨拶に行くと「1年‥‥遅かったね」と言われた。

「いや、1年半は遅かったと俺は思った。レコ大を獲って、次の年の3大球場をフィナーレにしても良かったかもしれない」

 そして77年の「勝手にしやがれ」の大賞シーンは、沢田の意向により長らく封印されていた。森本は、そこに沢田が「瞬間」に賭けてきた思いを読み取る。

「テレビで歌うことに対して、指差す角度のカメラワークから床に畳を敷くか敷かないまで、沢田ほど本気で口を出した男はいない」

 それが歌番組の演出を飛躍的に向上させたはずであると──。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , , , , , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
メッツ「藤浪晋太郎はもう使えない」現地メディアが見放しても「引き取り先なし」の絶望的惨状
2
ロッテ・佐々木朗希「日本ハムに3対1の電撃トレード」謎の投稿が激論に!
3
「巨人・大城卓三はFA宣言して巨人を出ていく」高木豊の見解を後押しする「阿部監督の起用法」と「契約」
4
「3年目の浮気」がモラハラで「天城越え」は殺人予告だって!? 昭和の名曲を愚弄する「芸のない番組」を見た
5
DeNA筒香嘉智の逆転本塁打を「美談にするな」!江本孟紀が異論「アメリカで成功しなかった人が…」