「復興予算は増税による国民負担が財源。事業の優先度を適切に考え、説明責任を果たすべき」──昨年10月30日に会計検査院はこう報告した。昨年秋に大問題となった復興予算の流用実態が明らかになったのだ。被災地を無視した“タレ流し予算”の構造は、いまだに残されたままだという。
国会の要請で復興予算を調査していた会計検査院が、11~12年度に実施された1401の復興事業についての調査結果を発表したのは、昨年10月30日のことだった。ある政治部記者が語る。
「相次ぐ流用が問題となりましたが、事業の23%に当たる326事業が被災地と直接関係ないと認定されました。全国民が忘れてはいけないことは、復興予算の財源です。昨年1月から25年間にわたる所得税額に上乗せした増税分で賄われているのです」
まさに「国民負担」によって成り立っている復興予算。適正に使用されていれば、痛みを納得して受け入れることもできるのだが、検査院の指摘にもあるように被災地と無関係な流用が延々と続いていたのだ。
この問題に火をつけたのはジャーナリストの福場ひとみ氏。「週刊ポスト」誌上で復興予算流用を明らかにし、その後、NHKが「NHKスペシャル追跡 復興予算19兆円」を放映し、世間に大きく認知されることとなった。以降、ドブに捨てているがごとき復興予算の流用実態が次々とつまびらかになっていったのである。
その内容を詳述する前に、まずは流用が行われるようになった経緯を振り返り、“主犯”を明らかにしたい。
「流用問題の原因となったのは、震災直後の11年6月24日に公布された『東日本大震災復興基本法』です。菅政権時に作られたのですが、ねじれ国会の中で迅速な成立を目指すため、自民党と公明党の修正案を飲む形で成立しました」(前出・政治部記者)
当時、自民党総裁だった谷垣禎一法務大臣(68)と公明党代表だった山口那津男参院議員(61)との間で決められた復興基本法の第一章第一条は、次のようになった。
「“東日本大震災からの復興”の円滑かつ迅速な推進と“活力ある日本の再生”を図ることを目的とする」
前出・政治部記者が解説する。
「もともとは『被災地の復興』だった部分が『東日本大震災からの復興』に変えられ、復興の対象が東日本全体になりました。また、『活力ある日本の再生』が加えられたことで、名目さえつけば何にでも予算を使用できるようになってしまったのです」
阪神・淡路大震災の経験をもとに、震災の研究・調査・提言を行っている兵庫県震災復興研究センターの事務局長・出口俊一氏はこう語る。
「流用は官僚たちによって行われたのですが、彼らに罪の意識はなく、平然と『この法律に従って業務を行っているだけだ』と言いのけます。民主・自民・公明の3党合意で成立したので、責任はこの3党にあると言えるでしょう」
法律の公布から2年半の間に、どのようなことに予算が使われてきたのだろうか──。
◆アサヒ芸能1/7発売(1/16号)より