昨年末、日本中に衝撃を与えた「餃子の王将」社長射殺事件。銃弾を放った犯人は事件発生から3カ月が過ぎた今でも逮捕されていない。しかし、京都府警の捜査の包囲網は確実に狭められているのだ。
全国に「餃子の王将」を展開する「王将フードサービス」(本社・京都市山科区)前社長の大東隆行氏(当時72歳)が、凶弾に倒れたのは昨年12月19日早朝のことだ。
出社直後の駐車場で車から降りた瞬間を狙い、25口径という殺人を犯すには不向きな小型の自動式拳銃を使用し、放った銃弾4発を全て命中させたうえ、車中にあった金にも手をつけることなく、現場には薬きょう以外の痕跡を残していない。そのみごとな手口ゆえに、発生当初から“プロの仕事”と見られてきた。
そして、プロの犯行ならば必ず大東氏に恨みを持つ“依頼者”がいるはず‥‥。それが捜査を担当する京都府警の主眼であった。
社会部記者が言う。
「府警はこれまで延べ7867人の捜査員を投入し、捜査に当たってきました。捜査1課だけでなく所轄の刑事課、さらには暴力団捜査を行う捜査員までもが事件解決へ向けて奔走しています。大東氏は穏やかな人柄で知られ、私生活でのトラブルは見当たらない。おのずと、仕事上でのトラブルに集約されていきました。事件直後から本社3階会議室に捜査員が常駐して、社員に事情聴取をしていたのもそのためです」
府警がこれまでに聴取した会社関係者は約75人に上る。そうした中から有力な情報が浮上し、捜査が急進展し始めているのだ。
地元記者がこう明かす。
「王将のある役員が会社への行き帰りに2人組の男につけられていることに気づいたそうなんです。ほぼ毎日続いていたので、不審に思った役員は2人組の人相を記憶した。すると、その2人組は府警の捜査員だったというのです。実際に、府警では役員を含む複数の会社幹部を極秘裏に尾行していたというのです」
いったい何のために尾行をしていたのか。前出・地元記者が続ける。
「会社幹部たちの行動確認だったようです。殺しにつながる怪しい人物と接触していないか目を光らせていたというのです。特に、王将が中国・大連に進出した際の中国での事業担当幹部が徹底的にマークされていたことがわかったのです」
王将は05年に大連に出店。大東氏が社長に就任した5年後のことで、その手腕で業績をV字回復させた直後だった。現在も大連に3店舗を構え、大東氏にとっては思い入れの強い事業であったという。経済ジャーナリストが話す。
「大東氏は月1回のペースで中国へ行くほど力を入れていた。しかし、その1号店をオープンさせる際に、現地のブローカーを使ったが、これがタチの悪い中国人だったようで、売り上げが好調だと聞くと、マージンの値上げを求めてきたり、トラブルになっていたそうです。その最中には、中国マフィアも現れたそうで、深刻な揉め事となっていたそうです」
事件発生当初から、射殺犯は中国人ヒットマンではないかと見られてきた。当然、府警としては大連でのトラブルに注目していただろう。徹底マークされた幹部がトラブルを知っていた可能性はある。
しかし、府警から行動確認されたのはなぜか。
「この幹部は中国での事業に携わったあとに、別の仕事をしていたのですが、その仕事ぶりを巡って、大東氏に叱責を受けたことがあると社内で噂されていた。つまり、恨みを持っていた可能性があったというのです」(前出・地元記者)
日本を震撼させた射殺事件は、いよいよ解決へと向かうのだろうか。
ある捜査関係者が言う。
「事件は未解決だけに、役員を含めた幹部たちにも危害が及ぶ可能性は否定できない。そのため、尾行ではなく警護をしていたのではないだろうか。大東氏が巻き込まれたであろうトラブルを一つ一つ潰しており、大連のトラブルにも注目している」
一刻も早く事件の全容が白日に下にさらされることを祈るばかりだ。