Jリーグ史上最も重い「無観客試合」という厳罰を下された浦和レッズ。過激さで有名な浦和サポーターが起こしてきた制裁事例は過去4回。だが、表ざたにならなかった事例は数知れず。そんな隠された余罪を一挙にバラす。
「ゴール裏は“聖地”。他の人に入ってほしくなかった」
問題の横断幕を掲出した過激サポーターは、浦和クラブの聞き取り調査に対し、こう答えていたという。スポーツ紙デスクが解説する。
「彼らは『外国人観光客が来ると応援の統制が取れなくなる』という旨の弁明を繰り返したそうです。でも、実態は韓国人選手などへの差別意識があり、かつ、自分たちに都合のいい応援席を保持したかっただけですよ。ゲーフラ(両手で持つ旗)の裏には、差別的な言葉が並んでいたそうですからね」
その傍若無人ぶりにはあきれるばかりで、以前から問題視されていた。
過去、Jリーグから浦和が制裁金以上を科せられたケースは4回。08年5月、ガンバ大阪のサポーターとの衝突トラブルこそ、浦和側に制裁金2000万円、G大阪側に1000万円と、両者に制裁が下るが、他は一方的な悪行を繰り返すばかり。サッカー専門誌編集者が振り返る。
「10年に仙台のチームバスに向かって差別的な発言を浴びせた際の制裁金は500万円。昨年は清水のチームバスに対して、爆竹やロケット花火を投げつけるばかりか、駐車場で警備員に暴行し、現行犯逮捕。制裁金は1000万円でした。08年以降、毎年のように制裁を受けても懲りず、再犯を繰り返す背景には、クラブ側の中途半端な対応ぶりが見て取れる。彼らは『話し合いで解決することこそ、我々の哲学』と説明してきたが、サポーターという名の大切な収入源である顧客の理不尽な態度を黙認してきたとしか映りません」
その実態は、ゴール裏のサポーター席を見れば一目瞭然だという。フリーライターが話す。
「そもそも『チケットが安いから』と入場した私服の一般ファンに対しても、『お前らは地蔵か!』と応援を強要し、ゴール裏を完全制圧してますよ。取材禁止エリアをいいことに、喫煙するヤカラまでいた。クラブの管理が徹底していない“無法地帯”ですよ」
そのためか、カメラマンへの警戒心は異常だ。
「取材エリアから撮影していても、サポーターに取り囲まれ、取材許可証の提示を求められる。そのモノ言いは横柄で『何、撮ってんだ!』と、高圧的に迫ってくる」(前出・ライター)
09年6月のナビスコ杯の大宮戦では、浦和サポーターがテレビ中継スタッフに暴行し、器物破損。制裁金200万円を科せられているが、マスコミへの態度は凶暴化するばかりだ。地方局の記者もあきれ果てて、
「まるで“半グレ”のようで、身の危険さえも覚えます。スタンガンで脅かされたこともありますし、数年前には1000万円ほどの業務用テレビカメラを壊されたこともあった」
サッカーライターの渡辺達也氏が話す。
「今回、制裁として4番目に重い『無観客試合』という決定でしたが、これでは対戦相手の清水のサポーターや一般ファンにも迷惑をかけることになりますよね。いくら1億円超の収益減になるとはいえ、結果的には、今回も金銭解決。クラブとサポーターが再犯を繰り返してきた以上、さらに重い『勝ち点減』という厳しい処分を下してほしかった」
J2降格を望む声さえ聞こえてくるのも無理はない異常事態なのだ。