「最近はお笑い芸人だけでなく、れっきとした局のアナウンサーまでもが『番組で爪痕を残す』などと言っているのを見て、不快でしかありません。本来、『爪痕を残す』というのは、事件や台風、災害が残した被害や影響を示すネガティブな言葉。成果を出すというニュアンスで使っているのが信じられない」
こう話すのは、民族派団体に所属する右翼男性A氏である。
乱れた日本語について、こう続ける。
「ヤクザ映画などでヤクザが『筋を通せ』とすごんでいるシーンがありますが、現役ヤクザはほとんど使いません。実際、ヤクザ社会は筋が通らないことばかりで、組織や上の人間の言うことには絶対服従ですから」
こうした誤用は日常的にいくらでも散見され、テレビ番組ではタレントら出演者やコメンテイターが乱発。
例えばよく使われる「姑息」とはどういう意味だろうか。「姑息な手段で」などと「卑怯な方法、汚い手を使う」との意味で使われているが、本来は「その場しのぎ、一時的な間に合わせ」を指す。
「彼には役不足だ」という言い方にしても「その人物の器や能力に対して、役割が足りない、低い、不満を持つ」が正解だ。人物の実力不足ではない。
さらには、あの国際政治学者にまで、A氏の批判は及ぶ。
「三浦瑠麗氏が朝のワイドショーで日本の出生について『しゅっせい』と発音し、ネットニュースでは『出世』と文字起こしされていました。三浦氏はTwitterでその記事を引用して『出生です』と訂正していましたが、そもそも『しゅっせい』ではなく『しゅっしょう』が一般的。戦時下の『出征』との区別をつけるためです」
日本語は奥が深いのである。