新型コロナの感染症法上の位置づけを2類相当からインフルエンザと同じ5類に引き下げる動きがある中、テレビや新聞はコロナ第8波とインフルエンザの同時感染をあおり、コロナによる死亡者数は史上最多と連日のように報じている。だが、その数字にはカラクリがあった。医療ジャーナリストが医療現場のリアルな実態を緊急レポートする!
1月14日の「NHKニュース7」でコロナによる死亡者数が第8波から急増、昨年12月から約1カ月半で1万2000人を超え、コロナ累計死亡者(6万2264人)の5人に1人が第8波で亡くなったと報じた。他のテレビ局も年末から「フルロナ」という言葉で、インフルエンザと新型コロナの同時感染を報じ、ネットニュースでも、潜在的なコロナ死者はもっといると恐怖をあおっている。
しかし、行動制限がないお正月を過ぎても東京都のコロナ陽性患者数は1万人前後で推移し、1月16日には患者数が4000人台にまで割り込んだ。テレビや新聞が騒いでいる「コロナ死急増」は本当なのか?
「コロナによる死亡者が過去最多と騒がれていますが、実際の死因は誤嚥性肺炎がほとんどです」と話すのは都内病院の呼吸器科医だ。誤嚥性肺炎とは何か?
「寝ている間に口の中の雑菌が気管支や肺に入り、肺炎を起こす病気です。がん闘病中などで抵抗力が落ちている人のほか、食事をうまく飲み込めなくなった高齢者や自分で寝返りが打てない寝たきりの老人が起こしやすい肺炎。誤嚥性肺炎で亡くなった高齢者を調べたら新型コロナの陽性でした、というケースがほとんどです。誤嚥性肺炎は加齢による老衰と言い換えてもいい。老衰までコロナ死にカウントしていれば、そりゃ過去最多になるでしょう」(呼吸器科医)
コロナ死といっても、志村けんさん(享年70)や岡江久美子さん(享年63)が急逝した3年前とは異なり、今は自宅で家族に見守られながら穏やかな最期、尊厳死を迎える在宅療養中の患者、高齢者も多い。また、コロナを機に往診やネット診察のサービスを開始した開業医も増えた。
「本来、誤嚥性肺炎は徐々に脳が低酸素状態になり、ハッピー・ハイポキシアといって、息苦しさや痛みを感じず、多幸感や浮遊感に浸りながら眠るようにお亡くなりになります。当初の新型コロナは低酸素状態がわずか数時間で急激に進行して呼吸苦の自覚もないまま意識を消失し、そのまま亡くなる患者さんが続出したことで恐れられていた。ところが3年が経過して従来のハッピー・ハイポキシアに戻ってきている。新型コロナが特別なウイルスではなくなりつつある印象です」(呼吸器科医)
発熱相談窓口の看護師もその実態を明かす。
「東京都発熱相談センターの相談件数が激減しています。第6波の1日平均が3000件、第7波は2500件でしたが、今は2000件を下回ることも。相談にあたっていた看護師は休業補償をもらった上で患者が増えるまで自宅待機。ようはリストラですね。受験生や学生のいる家庭でもないかぎり、発熱してもPCR検査は受けず、市販の解熱剤や総合感冒薬で治ってしまうのでしょう。ホテル療養や保健所の補助業務に就いている看護師も、患者数の激減で仕事の依頼が減ったと話していました」
つまり「発熱患者は消えつつある」というわけだ。