芸能

暴言暴力の嵐…ブルース・ウィリスを襲う「キレる認知症」の生き地獄

 米俳優ブルース・ウィリスの出世作「ダイ・ハード」は、日本語に訳すと「不死身」。つまり、何があっても死なない男を意味する。その晩年はまさにダイ・ハード、家族は2月16日、昨年に俳優業を引退せざるを得なくなった「失語症」の原因が「前頭葉側頭葉型認知症」であることを公表した。

 元妻のデミ・ムーアや現妻エマ・ヘミング=ウィリスが病名を公表し理解を求めたのもその切実な病状からだ。

 前頭葉側頭葉型認知症は、人間の社会性と理性、言葉をコントロールする前頭葉、側頭葉が萎縮していくため「反社会的なキレる中高年」になるのが特徴だ。コンビニやスーパー、百貨店、病院や役所に行くと、必ずと言っていいほど店員、職員を怒鳴りつける年寄りを見かけるようになった。

 池袋の母子死亡交通事故のほか、警察官など5人に重軽傷を負わせながら「自分は当て逃げ被害者」と供述する呆れた暴走老人など、高齢者による交通事故の原因も、こうした前頭葉、側頭葉の萎縮が関連しているとみられる。都内老人施設の施設医を務める精神科医が言う。

「50代から60代の初老期に発症し、認知症患者の1割が前頭葉側頭葉型と言われていますが、実際にはもっといるでしょう。脳が萎縮し、反社会的で暴力を振るう人格に変わるので、病院に連れていくことも困難なのです。ブルース・ウィリスさんは俳優という仕事柄、言葉が出なくなった初期症状で病院を受診したので、すぐに診断がついた。家の中でも外でも暴言暴力をふるい、近所トラブルを引き起こす。万引きを繰り返し、売り物の商品を盗み食いして、食べ過ぎては嘔吐物を撒き散らす。隙をみて車に乗り込んでは、事故を起こす。赤信号の交差点や遮断機が下りた踏切を、待てずに飛び出す。本人に罪の自覚はありません。お子さんがまだ高校生、大学生という働き盛りの50代男性が発症すると、やっかいです」

 筆者にも恐怖体験がある。夜勤アルバイト先の一般病院に「ちょっとそこのアナタ、包丁持ってきてくださらない?」と毎夜カーテンから手だけを出し、手招きする女性がいた。同型の患者は足腰が達者で素早く、それでいて手癖が悪く、突如として豹変する。

 ある時、同室患者の家族が果物の皮を剥くために持ってきた果物ナイフを、隙をついて盗み、それを振り回してスタッフを追いかけ回すという惨劇が起きた。

 フォークを手に介護職の目を突き刺そうと追いかける老婆もいたし、妊娠中の女性スタッフを執拗につけ回し、お腹に飛び蹴りを食らわす乱暴老人もいた。病院や施設での看護師の暴力だけが切り取られて報道されるのは、実にアンフェアだ。

「高級老人ホームや施設に入れても、他の入居者の部屋に入り込んで現金や貴金属を盗む、大事な思い出の品を壊す。他の入居者の食事を盗み食いする。便を塗りたくる。注意したら職員や入居者、家族に危害を加えるので、老人ホームからも追い出されます。退所の原因は患者の反社会的行為に原因があるので、高い入居金は1円たりとも返ってきません。脳の萎縮を止める特効薬も治療法もありません。唯一の対処療法は、暴れないよう向精神薬や鎮静剤を投与するしかない」(前出・精神科医)

 国の試算では、2030年には高齢者が人口の3割を占め、認知症患者は6500万人にのぼる。前頭葉側頭葉型認知症患者も600万人を超える計算だ。本人は認知症を患っている自覚がないまま、至る所でバイオレンス映画かホラー映画のような惨劇が繰り広げられる近未来が、もう何年か後に迫ってきているのだ。

 ブルース・ウィリスの家族は「ブルースの病状が進行する中、さらに理解と研究が必要なこの病気に光が当たるよう、メディアが注目してくれることを望んでいます」と述べている。この悲劇的な難病の治療法が早く見つかることを祈るしかない。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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