事件

“農業アイドル事件”遺族側弁護団「過剰パフォーマンス」に異例判決!(2)「ずるいなぁ」も名誉棄損に

 Hプロは松山市内の農地所有適格法人で、農産物のPRのために、ご当地アイドルユニット「愛の葉Girls」が結成された。いわば、兼業芸能事務所である。それゆえ、遺族側の広報活動は両方の業務に大打撃を与えた。取引先は100社から1社にまで減少し、収益は97%もダウンしたという。給与の支払いもできずに従業員を解雇して、「愛の葉Girls」メンバーとともに別会社に移籍させた。

 それだけではない。遺族の会見から数日間は事務所のFAX用紙がなくなるほど抗議文が送りつけられた。これはまだいい方で、刃物が送付されたほかに、佐々木氏がSNSにアップしていた子供の写真とともに「お前の子供も同じようにしてやる」と脅迫を受けていた。佐々木氏は仕事を失うどころか、家族に危害が加えられるのではないかという不安にも苛まれていたことになる。

「命を絶つことも脳裏をよぎりましたが、それではウソを認めることになってしまう。裁判に勝って真実をわかってもらおう」

 この一心で佐々木氏は逆境を耐え抜いた。なのに、行き着いた心境が「複雑」では報われない。遺族側が行った広報活動の罪深さを感じずにはいられない。その口火を切ったのが、18年10月の会見だ。この背景について、判決後に報道陣の前で渥美弁護士は、

「特徴的だったのはクラウドファンディング(CF)が一緒に行われたこと」

 と指摘している。このCFは遺族弁護団の1人である望月宣武弁護士が代表者を務める一般社団法人「リーガルファンディング」の第1号案件として会見当日からスタートした。名目は第1訴訟に要する交通費などの費用を賄うこと。

「広く一般の方からお金を集めるには、どうしても共感を得やすいストーリーが大事であるため、断定的な内容が語られてしまったのではないか」(渥美弁護士)

 早い話、アイドル対悪徳社長という構図が必要だったのだろう。遺族弁護団は会見とCFとの関連を否定しているが、目標額300万円には達しなかったものの、284万5000円を集めたという点では、うまくいったと言えよう。

 ただ、このCFほど第1訴訟の訴状には綿密さがなかった。例えば、Hプロ従業員と萌景さんのLINEのやりとりを示す画像が添付され、「また寝ぼけたことを言い出したらマジでブン殴る」という従業員のメッセージが残されていた。これをパワハラの証拠のひとつとして挙げていたのだ。

 だが、このメッセージには返信があった。目の下に人さし指をあてて「あっかんべー」をした萌景さんの自撮り画像が送られていたのだ。返信をカットしたことに佐々木氏は遺族弁護団の「印象操作」を疑った。

 この私見が報じられると、18年10月26日に望月弁護士は自身のツイッターで、「冗談でいいので『あっかんべー写真は冗談の言い合いだった』と裁判でも主張して欲しいです。潰せる反証を用意してお待ちしております。『冗談の言い合い』ではないことくらい、佐々木社長も分かっていながら記者に嘘の説明をする、ずるいなぁ」と法廷外で論争を展開した。

 勝ち負けがはっきりする訴訟において、依頼人のためにハッタリのひとつもかませなければ弁護士など務まらないのか。だが、望月弁護士のツイートは精一杯の強がりだったのかもしれない。第1訴訟の判決文で、

「(従業員のメッセージに)粗野な表現は含まれているものの、(略)全体を通してみると、グループ活動に関して萌景さんを叱咤して奮起を促すものと解される」

 まるで返信まできちんと読むべきと指摘され、遺族側の主張を退けたのだ。ちなみに、望月弁護士のツイートは第4訴訟の判決で名誉棄損が認められている。「過剰なパフォーマンス」との批判は免れないだろう。

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