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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「全日本との対抗戦にジャパン・プロレス始動!」

 1983年12月、元新日本プロレス営業部長の大塚直樹がアントニオ猪木に社名をもらい、新日本プロレスの兄弟会社として設立した新日本プロレス興行は、1年弱で日本プロレス界の台風の目になった。

 全日本プロレスとの業務提携、それに伴う新日本との絶縁、新日本から長州力率いる維新軍団ら13選手を引き抜いたのを機に84年10月9日にジャパン・プロレスに社名変更。興行会社から、自主興行も可能なプロレス団体になったのだ。

 だが、新日本から選手を引き抜いたのは興行会社を団体にするためではなく、業務提携先の全日本のテコ入れのため。

 馬場は選手引き抜きに際して、【1】新日本との絶縁で予想される諸問題はすべて全日本の負担において処理する、【2】85年からの選手のファイトマネーは年間200試合の支払いを保証、【3】ファイトマネーは新日本との契約1試合あたりの報酬10%増をもって算定という3つの確約を出していた。

 当初は新日本の営業力が欲しいということで大塚に業務提携を持ちかけた馬場だが、そこから2代目タイガーマスク(三沢光晴)が生まれ、人気絶頂の長州率いる維新軍団らの新日本の選手を全日本マットに引き入れることができ、ダイナマイト・キッド&デイビーボーイ・スミスも引き抜くことができたのだから、うれしい誤算だった。

 これにより85年から全日本マットは全日本VSジャパンの対抗戦が主軸になっていくが、その前段階として長州が11月1日の全日本・後楽園ホール大会を視察。客席にその姿を認めた天龍源一郎が「長州、上がってこい! いつでもかかってこい!」と挑発し、長州コールが起こる中で、顔色を変えてリングサイドに歩を進めた長州がフェンスに突入して若手が制止する刺激的な場面が生まれた。

 11月16日には後楽園ホールでジャパンが興行を手がける「全日本-ジャパン提携記念チャリティ興行」が開催され、新日本からジャパンに移籍したキラー・カーンがリング上から挨拶。本来ならば対抗戦に向けて威勢のいい発言をするところだが、人のいいカーンは「これから馬場さんにご厄介になります」と挨拶してしまい、大塚が苦笑する一幕もあった。

 12月4日、ジャパンは高松市民文化センターでプレ旗揚げ興行となる「ジャパン・プロレスリング・チャリティ興行~プロローグ~維新の夜明け」を開催した。

 アメリカ在住のマサ斎藤とカーンを除く11選手が参加して全5試合。試合後にはアニマル浜口のトレーニング教室、長州も参加してのイス取りゲーム、騎馬戦、サインボール投げといったアットホームなプレ旗揚げ戦になった。

 75日ぶりに実戦のリングに立った長州は、新日本のストロング・マシンと酷似した怪覆面Xと対戦し、ラリアット2連発からのサソリ固めで95秒勝利。怪覆面Xの正体は、馬場が派遣した渕正信だった。

 12月8日の全日本・名古屋大会では、マサ、カーン以外の全選手が客席に陣取って観戦。ここでアクションを起こしたのは馬場だ。

 馬場がマイクで「上がってこい!」と呼びかけると、ジャパンの11選手がリングになだれ込み、天龍と浜口の掴み合いから大乱闘に。

「長州たちだってスター選手なんだから、会場に来れば客が騒ぐことぐらいわかるはず。試合の雰囲気を壊すとは無礼極まりない。長州たちに明日からでも会場に来いと伝えてくれ!」と珍しくエキサイトした口調で語った馬場だが、しっかりと新年に向けての絵作りとムード作りをしたのだ。

 対抗戦の気運が高まる中で12月12日の横浜文化体育館における「’84世界最強タッグ決定リーグ戦」最終戦に長州、浜口、谷津嘉章、小林邦昭、寺西勇の維新軍団5人が正式参戦。

 まず第3試合に登場した小林&寺西が国際血盟軍の剛竜馬&アポロ菅原と対戦、小林がフィッシャーマンズ・スープレックスで菅原に快勝した。

 長州は第6試合で浜口&谷津との維新軍トップ3で、グレート小鹿&大熊元司&石川敬士と激突。

 全日本中堅勢も張り切って、小鹿が老獪な反則、大熊がヘッドバットの乱れ打ちで存在感を見せれば、石川は浜口相手に掟破りのサソリ固めを決めて会場をどよめかせたが、維新軍の猛攻はそれを上回った。

 大熊に3人掛かりの太鼓の乱れ打ち、ツープラトンのパイルドライバーなどの維新連係が爆発し、最後は長州が挨拶代わりのバックドロップからラリアットで決着をつけた。

 この日の横浜文化体育館は最強タッグの決勝と長州の全日本初登場ということで超満員6100人。今では見かけないダフ屋の数も半端ではなかった。

 翌13日には後楽園ホールで全日本の日本人及び外国人選手を借りてジャパンが創立1周年興行。長州はデイビーボーイ・スミスを撃破して激動の84年を締めくくり、新年からの全日本マットにおける維新革命第2章に目をギラつかせた。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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