芸能

上岡龍太郎「誰も知らないオキテ破り伝説」騒動編(1)回りながら漫才できるか!

 上方お笑い界の巨星堕つ! 「探偵!ナイトスクープ」など名物バラエティー番組の司会者として活躍した上岡龍太郎が5月にひっそり逝去した。立て板に水のごとき滑舌トーク、歯に衣着せぬ猛毒口撃、火花散る武勇伝は数知れず‥‥。異例の早期引退後も語り継がれる常識破り伝説で不世出の大物芸人の「謎」に迫る!

「芸は一流、人気は二流、ギャラは三流」をみずからのキャッチフレーズとした故・上岡龍太郎。だが、滑らかな語り口から徐々にヒートアップ、しまいには空也上人の念仏吐きのごとく詭弁を畳みかける弁舌は芸能界でもピカ一の切れ味だった。

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 上岡は高校卒業後、横山ノックに誘われ、60年に「漫画トリオ」として芸能活動を開始。当時を知る業界関係者が語る。

「ある演芸番組で、360度のコロシアムのようなセットにお客さんが入り、演者が少しずつ回りながら、漫才を披露するという企画があった。ところが、上岡さんは、『フリの時のお客さんと、オチを言う時のお客さんが違うのはおかしい』と大激怒。『回りながら漫才なんかできるか!』と怒り狂った。ノックさんが『そら、そうや』と肩を持ち、なんとかその場を収めたんです。当時はいくら人気者でも、テレビ局に歯向かう芸人なんて、上岡さんぐらいしかいなかった」

 一本気な性格は昔から変わらないまんまだった。

「パンパカパーン、今週のハイライト」と始まる時事コントで一世を風靡した「漫画トリオ」だが、68年の参院選にノックが出馬し、窮地に追い込まれる。

 芸能デスクが述懐する。

「トリオ時代の上岡さんは、横山パンチを名乗っていたが、活動休止後は“井伊パンチ”という芸名がつけられた。名付け親は上方芸能界のドン、演芸作家の香川登志緒、あのダウンタウンでさえも、『香川先生』と呼ぶほどの重鎮です」

 ところが、上岡は、

「こんなふざけた名前だと、ずっとギャグばかりを言う芸人人生になる。年齢を重ねたらマジメなコメンテーターの仕事ができない」

 と、大御所相手に大反抗。結局、香川の担当番組だけは井伊パンチ、他は、上岡龍太郎の名前で活動することで収まったという。

「後年、上岡さんは『あの時期がほんとに嫌だった。香川登志緒のせいで、気に入らん名前で仕事をせなあかんのは辛いもんやで』と語っていたそうです」(業界関係者)

「長いものには巻かれるな」をモットーとする上岡ならではの若き日の武勇伝だろう。

 しかし、トリオを捨てピン芸人となった上岡はゼロからのスタートを余儀なくされる。

「漫談家として舞台でルービックキューブをやりながら最後のオチを言った後に『はい、全面を完成させました』という気取った芸をやったり、レポーターで野外ロケをやったり、作詞家をやったりと精力的に活動していた。中でも、芸人としては珍しく、自身の経歴や特技、魅力などを一冊にまとめた『上岡龍太郎のすべて』というパンフレットを作成し、各局のテレビ局員や制作スタッフなどに手配りし、みずからを売り込んだのです」(芸能デスク)

 撒けば海路の日和あり!その努力の甲斐あって、その後、名司会者としての道を獲得したのであった。

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