事件

【殺人放火事件】実名公表の「特定少年」に死刑判決…モンスターから逃れる「通信制高校」という選択肢

 通っていた高校の先輩に言い寄られ、告白を拒絶したら家も家族も奪われた…。もはや学校にも安心して通えない世相には、絶望するしかない。

 フラれた相手を「拷問」するため、夜中に自宅を襲撃。両親と本人、妹にナタなどで襲いかかった上に、被害者宅を放火全焼させた。この殺人放火事件で殺人罪などに問われ、「特定少年」として初めて起訴時に実名公表された、当時19歳だった無職の男に1月18日、甲府地裁は死刑判決を言い渡した。

 特定少年は事件当時、甲府市内の公立定時制高校に通う生徒会長だった。公判によると、両親が離婚した後、母親が再婚して父親違いの妹ができた。ところがその母親には「お前が邪魔」と罵られ続ける、そんな生育環境にあった。 

 自身も襲われた被害者は生徒会役員で、裁判では次のように証言している。

「お父さん、お母さん、妹は何も悪くないのに、なぜこうなってしまったのか、考えています。巻き込んでしまったお父さんお母さん、妹にどう償えばいいのかずっと考えていますが、答えが出ません。 裁判で明らかになった犯行動機のひとつ、『私を拷問したかったが、家族を殺した方が私にダメージを与えられる』というものを聞きましたが、少しも納得できません」

 傍聴者からはすすり泣きが漏れたという。

 定時制に進学する事情は人それぞれにある。優秀な生徒がいる中で、幼少期から生きづらさを抱えた生徒たちが集まることは否めない。その中に「自分の告白を断ったから一生かけて拷問してやる」と考えるモンスターが紛れていたというのか…。

 折しも受験シーズン、出席日数が足りない等の理由で全日制高校への進学が難しいと言われた中学生とその親の中には、今回の特定少年への死刑判決に複雑な思いを抱いている者もいることだろう。

 例えばだが、ひとつの選択肢として、全国に250校以上ある通信制高校がある。登校せずともオンライン授業を受けられる上に、経営主体は予備校から専門学校、芸能プロダクションまで多岐にわたっており、大学受験資格のほか、調理師やTOEICなど資格試験へのサポートも手厚い。在校中に英検準一級合格を目指す高校もある。就業率は全日制より高い。

 一部授業は少人数制の登校が必要になるが、場合によっては別のレッスン、別のクラスに移ることもできる。

 特定少年が身勝手な恋愛感情を暴走させるきっかけになったのは学園祭の準備だったが、学校行事や人的交流が少ないのも、今の時代にはプラスに働くだろう。

 たとえ全日制に進学したところで、遅刻や欠席が多ければ留年・中退するのだから、卒業できるかどうかはどの形態の高校を選ぼうと、本人次第。自分の将来が見えない、地元の高校には通いたくないと思い悩んでいる中学生と親御さんには、答えはひとつでないことを頭に置いてみてほしい。

(那須優子)

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