カルデラ噴火は最悪の予測だが、
「たまっているマグマの量から考えて、クシャミ程度で済むことはまずない。相当、大きなのを覚悟しておいたほうがいい。大正時代の大噴火の際は、直後に大きな地震が発生した。今回も降灰の影響が大きく、当然、桜島から52キロ離れた川内原発にも影響は及ぶと思います」(琉球大理学部・木村政昭名誉教授)
ちょうど100年前に起こった大正大噴火は午前10時、桜島南岳の噴火で始まった。1時間もしないうちに鹿児島市内に降灰が始まり、連続して噴火が起こる。その勢いは熾烈さを増し、お昼前には巨大な岩石が噴出。昼過ぎには桜島全島が黒煙、白煙に包まれた。そして夕方になると、震度6の直下型地震が発生し、鹿児島市内では家屋や石塀が倒壊した。夜になると爆発音はさらに激化し、火山雷がとどろいた。今回も100年前と同じような噴火になる可能性が高いのだ。
大噴火が起きると川内原発はどうなるのか。京都大学原子炉実験所・前助教の小出裕章氏に聞いた。
「原発事故は、それが予測できず対策も取れなかったからこそ起こります。桜島が大噴火すれば、もちろん原子炉は停止になるでしょうから、みずから発電する力を失います。外部から電力の供給を受けることになっていますが、(灰の重みで)送電線が切断され、外部からの電力も得られないでしょう。その場合、所内の非常用発電機を動かすわけですが、福島第一原発事故の時には、非常用発電機が津波で動かなくなったために大惨事となりました。噴火の際に非常用発電機が正常に動くかどうか、断定的に判断することができません」
電源喪失となれば、使用済み核燃料を冷却することができなくなる。その深刻さは容易に想像できよう。
防災ジャーナリストの渡辺実氏が畳みかける。
「大正時代の大噴火のようになれば、川内原発にも10センチ以上の降灰があるでしょう。とすると道路は寸断され、ありとあらゆる交通機関がストップする。火力発電に頼ろうにも、灰を吸い込んだ火力発電所もタービンが止まります。要するに、都市機能は完全に失われるわけです」
大正噴火は1月だったが、今回は夏場。秋にかけては台風が発生し、接近することも多々あるのだ。もし台風と噴火が重なれば、さらなる悲劇の可能性が高まるのは必至で──。
「灰が溶け込んだ泥水が空から降ってくると考えてください。原発の敷地は強くぬかるんだ火山灰でいっぱいになる。敷地内の配管はそれによって損傷するおそれがあるでしょう。原発の作業員も火山灰に足を取られて、作業どころではなくなる」(前出・渡辺氏)