古市氏は言う。
「もともと豪栄道はあっちこっちの胴元で張り、裏カジノにも出入りするギャンブラーやったんです。それが、俺の弟(元力士、阿武松部屋。賭博開帳図利容疑で逮捕)のところでも張ると。しかも、額が太い。ところがいろんなレートを体験したくて、梓弓のところでも張るようになった。そこで負けが込んで400万円以上の負け金ができた。当時、豪栄道は母親に家を建ててやっている最中で、すぐにカネを用意できず、俺が立て替えて、あとで返してもらった。野球賭博は月曜日に始まって日曜日で締める。カネは月曜日か火曜日に支払うことになっています。賭けは現金がなくても、胴元を知っていれば、電話でどのチームにいくら(賭ける)と伝えるだけで、成立する。例えば、巨人に100万円、と言って勝てば、1割の手数料10万円を引かれた90万円が手元に入ってくる。勝負師ならおもしろくてしかたない。すぐに病みつきになってしまいます。勢い、負けが込んで借金漬けになることも多い。それだけ怖いんです」
ちなみに、相撲界には複数の野球賭博の胴元がおり、それぞれ暴力団組織とつながっているとされる。古市氏も現役引退後、一時はその世界に足を踏み入れていたが、
「俺は必ずしもそうではなく、相撲界だけで自己完結しているとニラんでいる。それぞれ“中継”がおり、流されてきたレートを自分で握ったり、他の胴元へ流したりして調整している」
前述したように、豪栄道は琴光喜並みのギャンブル好きでありながら、相撲協会の処分はけん責。そればかりか、
「いろんなギャンブルに手を出して、大関でいられるのが不思議なくらい」
と、古市氏は語るのだ。
相撲担当記者が言う。
「野球賭博問題が発覚した相撲協会では当初、過去5年間に遡って、野球を含む違法賭博への関与を自己申告すれば、情状酌量をくんで厳重注意のみ。それ以降に発覚した場合は厳罰処分とするとしました。豪栄道はこれで自己申告したんです。そもそも、検察は野球賭博については不問にしたわけであり、古市氏が捜査段階で供述したことを相撲協会は把握できなかった。そのため、豪栄道のように逃げ切ることもできたんですよ」
逃げ切り力士は豪栄道だけではない。再び古市氏の告発を聞こう。
「梓弓のところにはいろんなヤツが来ていたからね。そういえば、隠岐の海(八角部屋)もどっぷりつかっていた。確か負け金が1週間で500万円あって、俺が逮捕される前にレターパックを使って、そのうちの300万円を梓弓に送ってきたことがあった。張ったのは500万円の2倍と見て、1000万円ほど。しかも、そうしたことを何年もやっていたわけでしょ。隠岐の海も相当好きだったんじゃないか」
もちろん、レターパックで現金を送ることは禁止されている。
隠岐の海もまた、逮捕を免れ、(10年名古屋場所への)謹慎休場にとどまった。