エンタメ

ついに完結!「秋本治・こち亀」40年秘話を漫画界の重鎮が語り尽くす!(2)「人間の鑑みたいな人です」

20160922i2nd

 秋本氏は高校卒業後、アニメ制作会社のアニメーターとなる。病気の母の看病のため、約2年で退社。投稿漫画家として過ごすが、母の死をきっかけに新人賞に応募した作品こそ「こち亀」だった。当時ジャンプは、ギャグ漫画の強化を図っていた。デビュー前には劇画志向が強かった秋本氏だが、編集者に、「ギャグで行こう」と言われて「こち亀」の連載を開始する。

 あの小林よしのり氏が、「東大一直線」の連載を開始したのも76年。秋本氏を「同期」と呼ぶ小林氏が、当時を振り返る。

「秋本君とは担当が同じだったんです。今は集英社代表取締役になった堀内丸恵さんという人。当時、わしはまだ福岡に住んでたんだけど、堀内さんにくっついてなぜか秋本君も福岡に来て3人で『東大一直線』の取材に行ったりしてた。逆にわしが上京したら必ず3人でメシに行ったり。そうやって仲よくなりましたね」

 その関係は今日まで続く。

 出会った当初、秋本氏は口数が少なく、おとなしい青年だったという。しかし、ミリタリーなど趣味性の強いネタや、その時の流行を積極的に取り入れる「こち亀」を描くうちに、話の引き出しが増え、どんどん饒舌な人間に変わっていったと、小林氏は明かす。

「合作も何度かやりました。秋本君の仕事場に行くと、机の隅に栄養ドリンクの瓶が山積み。ようやく終わったら、ベッドをアシスタントとわしに譲って、秋本君は机に突っ伏して寝てたなぁ。特にギャグ漫画は、毎回アイデアをひねり出さなきゃいかんから大変なんですよ。秋本君から『もうやめたい!』ってグチを聞いたこともありました。それでも完結まで一度も原稿を落とさず、休載もなくて40年、200巻ですからね。偉業ですよ」

 30周年の時には、06年5月号の「メンズノンノ」で「こち亀」の特集記事が組まれた。秋本氏は、

〈ちばてつや先生の下町の世界も好きだったので〉

 と、「こち亀」の構想段階での秘話を明かしている。「あしたのジョー」(原作・高森朝雄)、「ハリスの旋風」「あした天気になあれ」など、ちば作品には下町を舞台にした名作が多い。ちばてつや氏に、「こち亀」の印象を聞いた。

「最初のペンネームを見た時は、ちょっといいかげんな人だなぁと、思ってしまいました(笑)」

 当初、秋本治氏は「山止たつひこ」というペンネームだった。「がきデカ」の作者・山上たつひこ氏をもじったものである。山上氏本人からクレームが出たこともあり、100話目で現在の名前に。著書で秋本氏も、〈山上たつひこ先生に本当に申し訳ないことをした〉〈若気の至りとはこのためにあるような言葉です〉と、反省することしきりだ。

「『こち亀』は半分ギャグで半分ストーリー。個性的なキャラクターも次々と登場して毎回読み切り。そういう作品ですから3、4年も続くかな‥‥と、思って読んでたんです。ところがいつまでたってもおもしろさが落ちない。私も経験があるんですが、漫画家は長く続けているとどうしてもスランプが来る。彼にはそれがほとんど感じられない」(前出・ちば氏)

 その秘訣は、秋本氏の“マンガ愛”だと、ちば氏は言う。顔を合わせると必ず漫画の話になるそうだ。

「『永井(豪)さんの作品のあのシーンがすごい』『安孫子さん(藤子不二雄(A))のこの場面のここがおもしろい』って、別の作家の何十年も前の1コマのことを細かく覚えてるんです。本当に真面目で漫画が大好き、漫画家の‥‥というより人間の鑑みたいな人ですよ」(前出・ちば氏)

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
ロッテ・佐々木朗希「日本ハムに3対1の電撃トレード」謎の投稿が激論に!
2
DeNA筒香嘉智の逆転本塁打を「美談にするな」!江本孟紀が異論「アメリカで成功しなかった人が…」
3
「巨人・大城卓三はFA宣言して巨人を出ていく」高木豊の見解を後押しする「阿部監督の起用法」と「契約」
4
岡田監督と不協和音!阪神・佐藤輝明「怒りの2軍落ち」で問題視された「試合に向かう姿勢」
5
トレバー・バウアー「メジャーリーグに動きなし」で「DeNA復帰」Xデーは交流戦明け