政治

小池百合子 逆境ハネ返し「突破の女王」!!(5)次なる戦場は衆議院選挙!

20161124s2nd

 小池は、キャスターとして人前で話すことには慣れているつもりだったが、人に強く訴えかけるアジテート型の話はできなかったし、絶叫するのは恥ずかしい。さらには、知らない人に手を振るということが、わざとらしくも思えた。

 が、選挙に出た以上、手を振らないわけにはいかない。ぎこちない手つきで、手を振った。

 名古屋市郊外の駅前で、小池は街宣車を背に手を振っていた。すると、目の前に車が止まった。小池が立っている側の後ろのドアが開いた。なんと、あまりにも手の振りかたがぎこちないため、タクシーの運転手が、タクシーを止めるために道路に出ているのだと勘違いしたのだった。とにかく、何が何だかわからないままに、小池は全国を飛び回った。

 7月22日に投開票が行われ、日本新党は細川、小池ら4人が見事に当選を果たした。

 小池は8月7日の初登院の日、モスグリーンのジャケット、豹柄のスカートと、まるで探検隊のようなサファリルックで登院した。取材に来ている新聞記者たちが、小池を取り囲んだ。

「何でそんな格好で登院したのですか」

 小池は言った。

「永田町には猛獣や珍獣、タヌキがいると聞きましたので、こんな格好で来ました。一票の重みを、バッヂにずしりと感じます」

 気の利いた小池のコメントに、新聞記者たちは翌日そのことを書いた。

 小池は、そのことでさっそく参議院の懲罰委員会にかけられそうになった。

「参議院の品位をおとしめる行為である」

 ということらしい。

 小池は平気だった。

〈ああ、政界とはこういうところなんだな〉

 93年(平成5年)には、日本新党は地方選挙で勝利を重ね、「台風の目」となっていた。既存の政党にうんざりした無党派層が、期待を寄せ始めていたのだ。

 細川は、自信に満ちた口調で言った。

「次の目標は、衆議院選挙です」

 小池もそのつもりであり、密かに心に誓っていた。

〈政権交代するその日まで、髪は切らないでおこう〉

 キャスターの時から、髪の毛は短めにしていた。伸ばそうと思っても、つい面倒になって短めにしてしまう。毎日髪の毛の手入れに費やす時間を一生に換算した時、その時問がとてももったいなく思う。合理的な考えの持ち主である。

 同年6月18日、宮澤喜一首相は、衆議院を解散した。

 細川、小池をはじめとした日本新党は、大きな目標を掲げていた。

「大いなるキャスティングボートを握ろう」

 小池は、細川に言った。

「私も、代表と一緒に衆議院に移ります」

 細川は、さすがに止めたかった。

「それは、やめておいたほうがいい。大変ですよ」

 が、小池は一歩も引かなかった。

「参議院は比例区ですから、小島慶三さんと円より子さんが繰り上げ当選になる。党には痛みがない。とにかく頭数です」

 結局、日本新党は追加公認を含めて57人を擁立、細川と小池は参議院から衆議院に鞍替えした。

 小池は、兵庫2区から打って出た。兵庫2区は、尼崎市、西宮市、洲本市、芦屋市、伊丹市、武庫郡、川辺郡、有馬郡、津名郡、三原郡が選挙区域であり、定数は5議席。日本社会党の土井たか子の地盤である。

 小池の初回の選挙は、参院比例区であったが、今度は衆議院議員の選挙区選挙である。選挙戦は、いっそう厳しさが増すことが目に見えていた。ただひたすらあちらこちらに回ってポスター貼りをして、「よろしくお願いします」を連呼した。

 だが小池は、「旧態依然の選挙戦も改革が必要」とマイペース。たすきや白手袋はなし。選挙カーでは名前の連呼をやめ、マイク放送の合間に鳥の声を流した。

大下英治(作家):1944年、広島県生まれ。政治・経済・芸能と幅広いドキュメント小説をメインに執筆、テレビのコメンテーターとしても活躍中。政治家に関する書籍も数多く手がけており、最新刊は「挑戦 小池百合子伝」(河出書房新社)。

カテゴリー: 政治   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「趣味でUber Eats配達員をやってる」オードリー若林正恭に「必死の生活者」が感じること
2
ラモス瑠偉「W杯惨敗サッカー日本代表コキ下ろし」に抗議電話15万5000件/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
3
桑田真澄に「偉業を全て盗まれた」同級生の元バッテリー捕手が明かす「ほとんど完全試合」時代
4
DeNA大型新人・渡会隆輝「とうとう2軍落ち」に球団内で出ていた「別の意見」
5
「キスしてる?」質問にフジテレビ・井上清華が衝撃「赤面もじもじ返答」の「まさか!」