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やくみつる×貴闘力 大熱戦「五月場所」副音声“裏解説”(1)先代鳴門親方の「教え」とは…

 ケガが心配される新横綱・稀勢の里にとり“試練”となる五月場所の見どころを相撲通の漫画家・やくみつる氏と元関脇・貴闘力の鎌苅忠茂氏が徹底解説。モンゴル人横綱の本当の実力、そして新入幕を果たした次代の「横綱候補」とは‥‥!? テレビでは明かせないウラ話を「副音声」で独占実況!

──稀勢の里は横綱に昇進してテレビに出ずっぱりになるかと思いきや、どっこい全然出ない。かたくなまでに自分を貫いていますね。

貴闘力 稀勢の里のよさは、まさにそこにあると思うな。ニコニコして映ってないほうがいいよ。客ウケを狙う力士が多い中で、そういう力士が一人くらいいてもいいじゃないですか。

やく もっとサービスをしろなどと、マイナスの捉えられ方をされてないですもんね。

──何か、意地みたいなものを感じます。それはともかく、春場所は食い入るように相撲を見ました。

貴闘力 稀勢の里はね、持っているものを全部出そうというのが伝わってくる。一生懸命やろうというのが伝わってくるから応援したくなるんです。コツコツやってきたものが実を結んで30歳で綱を張れた。そうやって完成したものが感動を呼ぶわけです。

やく 我々が持っている「お相撲さん、かくあるべし」というお相撲さん像にかなっているじゃないですか。このところの稀勢の里と去年までの稀勢の里では、だいぶ違いますよ。去年まではね、同じ過ちを何度も繰り返す。落語でいう与太郎的魅力でした。何でここで同じ過ちをするのっていうね。それがファンにはもどかしくてならなかったが、そこに与太郎的なよさがありました。愛すべきキャラクターだということです。しかし横綱になってからは、その与太郎的なよさの部分が別人のように払拭された。その代わり、俺の相撲を見に来てくれたんだという主役意識といいますか、上位力士なら持ってほしいなみなみならぬ意識を持っていました。

貴闘力 稀勢の里を語るには師匠の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)を語らざるをえない。オレ、下っ端の頃、隆の里関に2年間、付け人として付いていたんですよ。当時、二子山部屋は藤島部屋といって、親方(元大関貴ノ花)は(元横綱初代若乃花の)二子山部屋出身。そのため、隆の里関には1日4時間くらいこき使われた記憶があります。当時、隆の里関は肘を痛めていて、オレがマッサージをやるわけですが、なんとそれが3時間。陰でぶつぶつ文句を垂れながらやっていました。「お前、そうやって辛抱したから強くなれたんだぞ、今があるのはオレのおかげだよ」と鳴戸親方から言われました。なるほど、それも一理あるなと思いました。

──先代の鳴戸親方はすごく話好きというか、お説教好きで以前、稽古を見に行った時、関取衆が申し合いをしていると、突然、割って入って30分くらい説教をしたのには驚きました。

貴闘力 亡くなった大鵬親方も説教が好きで、いろんなことを教えようとする。ちゃんと聞かないと、「これが修行なんだ」と厳しかった。

やく 大鵬さんも教え魔でしたか。やんちゃな鎌苅さん(貴闘力)ですが、2人の厳しい親方から薫陶を受けたと聞かされると、含蓄のある言葉ですね。

貴闘力 個性的な親方や力士には本当に恵まれていましたね。

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