お笑いコンビ「インパルス」の堤下敦さんが睡眠薬を飲んで車を運転、意識朦朧となった報道がありました。本人によれば「じんましんに全身を襲われ、かゆみで眠れなかった」ことから睡眠薬を飲んだそうです。
じんましんは消化管が十分発達していない幼児期に起こりやすい症状ですが、大人でも悩まされる人は少なくありません。堤下さんのように、かゆさに悩まされる場合、医師の診察を受けるべきか、受けなくても大丈夫か、どちらでしょう。
皮膚に発疹が生じ、かゆくてしかたなくなるじんましんの原因には、アレルギー性と非アレルギー性があります。
アレルギー性じんましんは食べ物や薬が原因となります。発酵した生魚(サバなど)を食べると、化学物質であるヒスタミン性の物質が作られ、体が異物として認識します。その際にヒスタミンが放出されると、血管が拡張され血液中の水分を血管の外に出してしまうことで皮膚が赤く腫れます。魚介類、肉類、卵、乳製品、野菜はアレルギー性じんましんの原因となりやすく、ジャガイモやキュウリに反応する人もいます。
ソバ・小麦・卵・乳製品・落花生は「五大アレルギー成分」と言われています。例えばソバ粉に含まれるたんぱく質が原因となるソバアレルギーは、じんましんのほか、口の周りが腫れたり、呼吸困難になったりします。これは治る確率が低く、大人になっていきなり発症することもあります。
食べ物ではなくとも、便秘や飲みすぎで体に毒素がたまったり、室内のダニやほこりなどハウスダスト系のアレルギーもあります。花粉症の原因となるスギ花粉も、目や鼻は何ともないのに、皮膚症状に悩まされることもあります。
一方、非アレルギー性じんましんは、食べ物以外が原因となります。下着による摩擦や、重いバッグなどを手に引っ掛けた際の重力による圧迫で出ることもありますし、プールや海に入ってできる寒冷じんましんという症状もあります。
サバのようなアレルギー性のじんましんでは背中一面にじんましんが出ますが、非アレルギー性の場合、ほとんど背中には出ません。なぜなら手が届かないからです。逆に太腿など手が届きやすいところに出ますが、つまりは「かいてしまう」ことで生じる「自家感作性皮膚炎」というアレルギーです。
症状が出ないレベルのアレルギーではありますが、刺激することでヒスタミン性の物質ができ、それが血液中で回ると、他の個所もかゆくなります。
堤下さんのように、睡眠薬で寝た場合、ぐっすり眠れるため、かかなくなります。
とはいえ、かくのを我慢することはなかなか難しいもの。なぜなら、かくことは気持ちがいいからです。悪くなるとわかっていてもかいてしまう、その気持ちは十分にわかります。
もっとも、皮膚の病気はかけばかくほど悪くなります。患部は、温めるとムズムズとかゆくなるので、冷やして落ち着かせること。しかし、氷で冷やすとその時は気持ちいいですが、離したあとにカーッと熱くなりかゆくなります。ケーキなどについてくる保冷剤を常温にしたものをオススメします。
皮膚(体温)は36度前後ですが、常温の保冷剤は26度ぐらいで、これだけで10度の差が生じます。これなら保冷剤を患部から離した時に反動で温まることがありません。重症ならば冷蔵庫で冷やしたものを使用するといいでしょう。
さて、通院するべきか否かですが、前述のとおり、体に毒素がたまるアレルギー性の可能性もゼロではないので、長引くようなら念のため医師に診てもらうことをオススメします。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。