その先にビジョンはあるのだろうか。
サッカー日本代表のロシアW杯出場権をかけたアジア最終予選の戦いが佳境を迎えている。ここまで日本は8試合を戦って5勝1敗2引き分け、勝ち点17でグループBの首位に立っている。8月31日に行われるオーストラリアとの一戦に勝てばロシアW杯出場権を獲得できるという状況だ。しかしこの状況、手放しでは喜べない。その理由は世代交代の遅さにある。
時の流れとともに、徐々に若い選手が日本代表に招集されるようになってきた。しかし、そんなチームの中心はいまだに本田圭佑や香川真司、長友佑都といった長年日本代表のスタメンを張ってきたベテラン組。時の流れがそこだけ止まっているかのようだ。この状況は、彼らベテラン組の力が今もなお必要とされていると同時に、彼らにとって代わる人材が不足しているということを裏付けている。つまりは世代交代がうまくいっていないのである。
世代交代の遅れはそのままチーム力の低下につながる。今、その傾向が顕著なのがオランダ代表。ロッベンやスナイデル、ファン・ぺルシーといった世界的名手に依存している裏で、彼らに続く人材が枯渇。その結果昨年のEURO(欧州選手権)ではまさかの予選敗退。ロシアW杯の出場をかけたヨーロッパ最終予選でもグループ3位と苦しい戦いを強いられている。
ただ、ドイツのように世代交代の遅れをバネにその後復活を果たしたチームもある。ドイツも世代交代に苦しみ2000年のEUROでは1次リーグを最下位で敗退するという屈辱を味わった。そこからドイツは一から自国の選手育成を見直し抜本的な改革を実施。国内リーグのチームにユースチームを持つことを義務付け、リーグにドイツ人選手枠を設定するなど、より多くの若手が育つように環境を整えた。その結果、2014年のブラジルW杯ではみごと優勝、長年にわたる改革の成果を裏付ける結果となった。
「スクラップ&ビルドでこの国はのし上がってきた。今度も立ち直れる」とは、映画「シン・ゴジラ」のラストシーンでのセリフだ。日本には、W杯に出場を果たしながら、一方で、世代交代を進めるために思い切った「スクラップ&ビルド」を断行するという難題を何とかクリアしてほしいものだ。
(戸畑マサシ)