官邸関係者が続ける。
「北朝鮮が拉致問題で『裏金外交』を持ちかけてきたのは、経済制裁でジワジワと首を絞められているから。本格的な冬を迎えれば石油の確保に苦しみ、『圧力』の影響がさらに大きくなると見られている。小泉訪朝時には拉致被害者1人につき、『500億円を払う』という交渉もあったようで、言い方は悪いですが、北朝鮮は外交カードとして拉致問題を利用したいのです」
現在の北朝鮮が置かれた立場は、浪費がやめられない小遣い制のサラリーマンのようなもの。核・ミサイル開発という浪費を続ける一方、米国を中心に「経済制裁」の包囲網が敷かれ、日々の小遣いにも汲々としている状況だ。日本でもトランプ大統領の離日後、北朝鮮への資金源を断つため、新たに35団体・個人の資産凍結の制裁措置を決定。欧州連合(EU)でも、石油製品の禁輸措置を含む制裁を強化している。
「さらには11月9日に北京で開かれた米中首脳会談では、トランプ大統領が中国の習近平国家主席(64)に『平和的に圧力をかける現在の努力を維持するだけでなく、もっとやる必要がある』と圧力を強めるように迫る場面があった。北朝鮮の貿易の9割を占める中国側の協力を得られれば、最大限の効果が発揮されるでしょう」(外信部記者)
対する北朝鮮も黙ってはいない。韓国に対しては南北和平を材料に、日本に対しては、拉致問題解決をカードとして経済援助を引き出そうとする中、さらなるしたたかな戦略が隠されていたというのだ。前出・官邸関係者が解説する。
「拉致被害者を返して日本から金を引き出したうえで、日米韓三国の分断を画策していたのです。日本は世界に向けて北朝鮮への制裁・包囲網を狭めていくことを呼びかけながら、裏では勝手に交渉をして、お金を払っていたとなれば、安倍政権にとっては具合が悪い。国内の政権支持率を上げるために対外的にはウソを言って、逆のことをしていたことになってしまう。そうなると、圧力強化主義の米国からは『裏切り者』だと罵られて、韓国は『二枚舌』だと不信感を募らせることになる。結局、安倍政権は北朝鮮の誘いを拒んだ。拉致被害者の命よりも、対米韓のメンツを優先した形になります」
仮に、日朝で「裏金交渉」が成功したとしても、それから時間がたたずに北朝鮮の「裏切り」が実行されていたと、前出の官邸関係者は続ける。
「北朝鮮は『内密の話だ』と言っておきながら、日米韓を分断させるため、必ず米国や韓国にバレるように情報操作で工作してきます。日本から大金を手に入れただけでは、一時的に財政が潤っても国際的な経済制裁が続くかぎり、いずれまた苦しくなってしまう。そのために三国の連携を阻止して、圧力を少しでも緩めたいのです」
まさに水面下では、日本と北朝鮮の情報戦が繰り広げられているのだった。