夫との仲だけではなく、親族との関係の悪化から「死後離婚」に踏み切るケースもある。
関西の海沿いに位置する県は閉鎖性が強いことで知られるが、山田直子さん(48)=仮名=が住んでいる場所は、その中でもかなりのへき地。25歳で一回り年上の夫と結婚し、2人の息子と生活していた。が、直子さんにとって、どうにも我慢ならなかったのは、義父母、夫、そして親族全員が吝嗇家であることだった。
「ものすごいケチなんです。知人や親戚にお歳暮、お中元を贈るにしても、10円単位のことで文句を言われる。おまけに、日が入ると畳が傷むからと、窓を開けない。もう、家の中が年中、辛気臭かったです」
つまり、家風が合わなかったとも言えるが、もっと鷹揚になってほしいと言うと、夫は冷たく笑った。そればかりか母も我慢するように意見してくるので、直子さんはずっと耐えてきたのだ。
転機は長男が交通事故で亡くなったことである。さらに追い打ちをかけるように、葬儀のことでモメた。直子さんは長男のために盛大な葬儀にしたかったが、またしてもケチな義父母や親戚が反対。夫もそれに唯々諾々と従った。
「その時、私の中でプッツンと何かが切れました。『こんな人とはとうていやっていけない』と」
ひそかに離婚を決意していたが、そんな時、夫が突然の死。心筋梗塞だった。
直子さんは迷わず、夫の両親とも縁を切ろうと「姻族関係終了届」を提出し、家を出たという。
「もちろん、義理の両親や親戚中から大反対されました。『そんな世間体の悪いことをするな』って。でも、これ以上、辛気臭い家にいるのは嫌でした。あちらの両親はともに80代ですが、親戚が多くて財産のことでまたモメることも目に見えていますし。私は公務員で地元の市役所に30年勤めているんですけど、幸い次男も独立しているので、残りの人生は自分のために生きていこうと思います」
ちなみに「姻族関係終了届」は、義理の両親などにわざわざ通告する必要はなく、妻が単独で提出することができるのだ。
監修/離婚問題アドバイザー・露木幸彦