米メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスへの移籍が決まった大谷翔平(23)。その期待値は日米ともに大きな盛り上がりを見せる一方で、メジャーならではの“試練”も待ち受けているのだ。
大谷がメジャー7球団との面談の末に選んだ移籍先は、まさかのエンゼルスだった。労使協定の「25歳ルール」が適用された大谷は、外国人選手の契約金の厳しい上限規定に縛られるため、最終的に、大谷が入団条件として考慮したのは、二刀流への挑戦が許されるのと、よりよい環境が提示されることだった。こうした条件にいち早く応えたのが、エンゼルスだった。交渉段階から具体的な二刀流プランを提示したばかりか、メジャーでは異例となる先発投手6人ローテーションを採用(通常は5人ローテーション)。中5日の間隔を作り、その間に大谷をDHで起用する方針を示したのだ。
まさに三顧の礼を尽くしたエンゼルスの待遇に、全米では早くも二刀流の成否に注目が集まっている。
「あれだけの争奪戦を繰り広げたわけですから、表向きは二刀流起用を示唆していますが、実際のところは投手をメインに考えているはずです」
こう語るのは、長くメジャーリーグを取材しているスポーツライターのAKI猪瀬氏だ。
「大谷のように160キロ近い直球を持つ投手がメジャーに移るのは、今がいちばんいいタイミングです。ここ数年、メジャーではツーシームやカットボールといった打者の手元で沈む変化球が全盛でした。その対策のため、昨年あたりから打者がすくい上げるようなスイング(アッパースイング)で対応するようになった。今年、メジャーの本塁打数が過去最多を記録したのは、その影響です。その一方で、アッパースイングでは対応しづらい高めの速球を武器にする投手は成功しています」
つまり大谷の速球はメジャーにとっても実に魅力的に映っているというのだ。
メジャーに詳しいスポーツライターの友成那智氏は、「投手大谷」にとって、エンゼルスという選択は悪くなかったと話す。
「とにかく、このチームにはロクな先発投手がいない。今季、2桁勝利をあげているのは11勝のJ・C・ラミレスと10勝のパーカー・ブライドウェルの2人だけ。その次は6勝止まりです。故障上がりの投手も多いため、質より量のローテーションを組まざるをえない。大谷の実力を考えれば、間違いなくローテの中心として扱われるでしょう」
では、打者としてはどうか。日本ハム時代と同じように通用するかといえば、話はそう簡単ではない。「最大の壁」としてあげられるのが、メジャー投手の内角攻めだ。
「メジャーリーグでは、投手に対しては厳しい内角攻めはしないという暗黙の了解がある。しかし、DHとして出場する場合は一打者として扱いますから、遠慮なく内角に投げてくる。注目の新人であればなおさらです」(友成氏)
ちなみに、大谷が日本ハム在籍の5年間で受けた死球は、わずかに4個。
「腰から上に当てられたのは1回だけ(後背筋)で、その時の投手は広島のジョンソン。日本人投手には、球界の宝である大谷には当ててはいけないという空気が少なからずあったようですが、外国人は右投手の命とも言える右肘への死球もいとわない」(球界関係者)
日本で厳しい内角攻めに慣れていない大谷にとって“忖度”しないメジャー投手への対応は大きな課題となりそうだ。