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記事全文を読む→【貴族の困窮生活】神社仏閣の財物を持ち出して売り捌いた「後水尾天皇の側近の娘」処罰が軽かったワケ
貧すれば鈍するか。鎌倉、室町、安土桃山、江戸時代は武家社会で貴族は身分や位こそ高いが、経済的に困窮していた。慢性的な借金地獄に苦しむ家は多く、秘かに家財、調度品、衣類を売却する女性があとを絶たない。そんな複数の例が、記録として記載されている。
いくら身内とはいえ、当主に黙って窃盗すれば立派な犯罪になるが、家財の不正処分という扱いで、大した罪にはならなかった。ところが自分の家ではなく、神社仏閣の財物を「借りる」という名目で持ち出した、「寺宝の持ち出し」事件を起こした人物がいる。
天正16年(1588年)生まれで歌人、能書家として活躍した中村通村の娘だ。正二位、内大臣で中院内府と呼ばれる通村は、後水尾天皇の側近として反幕府運動の中心的な人物であったが、その娘が犯罪者だ。
寺社の宝物を「借用」と称して持ち出し、返却せずに売り捌いたり、借金のカタにした。当然、寺社側は朝廷に訴えたという記録が残っている。
ただ父の身分が高い上、天皇の信頼が厚かったため処罰は軽く、家の体面のため名前さえ伏せられたとされる。当時の記録には「中院家の娘」としか記されていない。
幕府の圧迫や宮廷交際費の増大で莫大な借金を抱えていた
公式的には通村の娘は従一位、権大納言の清閑寺供綱の妻ひとりしかいないが、真相は少し違うようだ。
実家の中院家は村上源氏の名門でありながら、幕府の圧迫や宮廷交際費の増大で莫大な借金を抱え、清閑寺家も同様に困窮していた。借金返済や生活費を工面するための苦渋の選択で、勝手にやらかしたことではなかったようだ。
実際、父親も自らの「通村日記」で、ゆかりのある門跡寺院から秘かに古今和歌集の古筆や当時の一流絵師の屏風などを持ち出したと書いてある。この日記では商人に金を借り、利息の支払いに四苦八苦する生々しい現実も記されており、娘はその実行部隊にすぎなかった。
高貴な身分でありながら泥棒まがいの行為に手を染め、商人に頭を下げ続けた通村の娘の心中はどうだったのだろうか。
(道嶋慶)
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