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記事全文を読む→気になる著者に直撃!〈黒川伊保子〉AIの答えを信じすぎるな!最後は人間の勘がものをいう
「AIのトリセツ」
扶桑社新書/1100円
ベストセラー「トリセツ」シリーズでおなじみの人工知能学者・黒川伊保子氏が、最新作「AIのトリセツ」を上梓した。急激に進化するAIとどう向き合えばいいのか。黒川氏に聞いた。
黒川氏は、AI研究黎明期の83年から、富士通でエンジニアとしてAIの開発に携わってきた。
「大学では物理学を専攻し、43年にわたってAIと脳の研究フィールドにいますが、創生期の研究者たちは、鉄腕アトムのような人間そっくりの理想の知性を作ろうと、夢を語る姿にずっと違和感を覚えていました。そして今、使う側もAIを『理想の人間』『理想の知性』のように思い込んでいる。それはとても危険で、ここで楔を打ち込んでおかなければいけないと思い、この本を執筆しました」
「AIのトリセツ」執筆中に印象的な出来事があったと言う。今年の5月25日、巨人の阿部前監督が家庭内のトラブルで現行犯逮捕された事件だ。酔った阿部氏に暴力を受けた長女がAIに相談し、児童相談所に連絡した結果、阿部氏は逮捕され、監督も辞すことになった。
「仮にあの時、身近な人に相談していれば命の危険はないと判断して落ち着かせ、父親に苦言を呈してくれたかも。AIには、命の危険がないと判断する身体感覚がないので、最大の安全策をとるしかありません。ユーザーの言葉を真に受けて、最大限の答えをするしかないのです。正解の一つであることは間違いないけれど、現場感からかけ離れることもあるのです」
この件も踏まえ、AIはユーザーを徹底的に「えこひいき」する存在だと理解することが重要だと説く。
「AIの答えは完全な間違いではないことが多い。100件に1件しか起きないことでも『そういうケースもある』と答えてしまう危険があります。つまりAIは質問の『隙』を突いてきます。だからこそ、人間がAIをどう使うかが重要になってきます。『AIなんて所詮そんなもの』という理解も教養の一つだと思います」
とはいえ、さまざまな分野がAIに置き換えられ、「仕事を奪われる」と不安を感じている人も多い。
「この50年間で人間の存在意義を『情報を処理し、答えを出すこと』に寄せすぎてしまいました。だからAIが登場すると、自分が培ってきたものを全部持っていかれるような不安を感じるのだと思います。でもそれは誤解。AIは体もなければ生存本能もありません。人間は身体感覚(距離感、皮膚感、人の心の機微)や経験を総動員して判断することができます。この勘どころは現場を知る人間の勘でしか作り出せません。これからはAIで代替できる企画作成や情報処理などのホワイトカラーの仕事は圧縮され、肉体を使うブルーカラーの仕事に投資も集まり、収入も上がる可能性があります。ブルーカラーがゴールデンカラーになる時代がくるかもしれません」
最後にAIとのつきあい方をこう提言する。
「AIは壁打ちには最高です。自分の命題(発想や課題)をAIに聞くのです。返ってきた答えを鵜呑みにせず『それ、本当?』といったん立ち止まり、精査する。そのためには、生身の人間との接触を増やすといいでしょう。スマホを眺めている暇があったら、居酒屋で仲間とくだらない会話をすることを、ぜひおすすめします」
〈原悟平〉
黒川伊保子(くろかわ・いほこ)脳科学・人工知能(AI)研究者・感性アナリスト。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピュータ・メーカーにてAI開発に従事。03年より(株)感性リサーチ代表取締役社長。語感の数値化に成功し、大塚製薬「SOYJOY」など、多くの商品名の感性分析を行う。「妻のトリセツ」「夫のトリセツ」など著書多数。
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