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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第7回「600万円のロレックスを520万円で売って儲ける手口」〉(2)転売で還付が積み上がる
600万円で仕入れた時計を520万円で売る。その80万円の赤字は、どこで埋まるのか。
消費税である。
まず密輸によって、輸入時に払うべき消費税を免れる。600万円の時計なら48万円だ。そのうえで国内で仕入れたように帳簿を作る。すると、払ってもいない48万円を仕入税額控除として計上できる。
それだけではない。
密輸したロレックスを、用意した中国人観光客に買わせる。外国人観光客が免税店で買った商品には消費税がかからない。つまり売上にかかる消費税はゼロになる。だが仕入れで計上した48万円は控除として残る。その差額が還付として国庫から出てくるのだ。
払わずに済ませ、さらに受け取る。単純計算で96万円。80万円の赤字は、ここでひっくり返る。
先のネクサス事件で東京国税局が問題視したのも、この二重の詐取だった。
「店側は大々的に言ってました。『こちらはその税金還付で儲けますので』って」
しかも還付は、一度きりではない。
A店が転売屋に売り、転売屋がB店に持ち込む。同じ番号でも、店が変われば還付は立つ。
中野の各店を巡りきると、今度は大阪・船場へ移される。同じ時計が業者から業者へ渡り歩き、そのつど国庫からカネが出ていく。
時計そのもので儲ける必要などない。回せば回すほど、還付が積み上がっていくのだ。
転売屋は1円でも安く買える店を選ぶ。店の側は、その転売屋に買ってもらわなければ還付が立たない。だから値を下げる。競合が多いぶん、相場は際限なく落ちていった。中野相場が世界最安値になっていた理由が、ここにある。
では、なぜわざわざ海外から運ばせるのか。国内で買った時計では駄目なのか。
それにはシリアルナンバーが関係していた。
一度使った番号は、その店では二度目が通らない。大阪から1週間で戻ってきた時計は、還付が取れないため買い取りを断られる。
「海外から入れれば、どこも回ってない。だから100%売れるんです」
必要なのは時計ではない。まっさらな番号だった。
金にはさらに、元手も要った。抜けるのは消費税分だけだ。当時の8%なら、1キロ450万円の金でわずか36万円にしかならない。割に合わせるには数十キロ単位で運ぶしかなく、そのためには億単位の仕入れ資金が要る。
誰かがカネを用意しなければ大きなシノギは始まらない。過去に金密輸ブローカーが2億~3億を用意していたのも、そのためだ。
そう、ロレックスではカネを出すのが店ではなかったのだ。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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