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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第5回「ギャラ500万円」「那覇ルート」プライベートジェット密輸の核心〉(1)逃げても必ず「詰める」
消費税が8%に引き上げられると、裏社会ではより多くの人間が金密輸に興味を示した。それまでは手荷物に忍ばせて税関をすり抜けるという手口が横行していたが、より大胆な方法が取られるようになる。プライベートジェットを使った密輸劇の核心に迫る。
2014年4月。金密輸は、消費税が8%へ引き上げられ利ざやが増したことで、半グレたちの間で爆発的な広がりを見せていた。
運び屋が摘発されても罰金を払えば金自体は戻ってくる。何より消費税分がそのまま利益になる─そうしたリスクと旨味とのバランスが取れた構造に、ヤクザ組織が目をつけるのは、時間の問題だった。
「俺らはカネを投げていただけだけどね」
かつて金密輸に出資していた柳沢(仮名)は言った。身元を秘すため詳細は書けないが、組織の看板を背負っていた男だ。
もともと柳沢は金密輸というシノギの存在自体は知っていた。それでも「最近よくパクられてるな」という感覚があったことで、リスクに見合わないと踏み、それまで手を出してこなかった。
シャブの密売や特殊詐欺で充分に稼げていたからだ。
だが、今回ばかりは事情が違った。
柳沢にこの話を持ち込んできたのは、中国残留日本人孤児の2世・3世などを中心に結成された半グレ組織「怒羅権(ドラゴン)」の関係者だった。怒羅権は東北グループや葛西、王子、赤羽など地域と世代によって細かく分かれており、首都圏に広大なネットワークを持つ。そしてその出自ゆえに、香港にも深いつながりがある。
金の仕入れは、その怒羅権ルートですでに確立しているという。しかもこれまでのようにシリコン腹巻きなどに忍ばせてチマチマ運ぶのではなく、プライベートジェットで大量の金を一気に運ぶというのだ。
なぜプライベートジェットなのか。
聞けば「税関の検査を受けずに済む」という触れ込みだった。ただし大量に運ぶ分、資金も大量に必要になる。
「だから資金面でバックアップしてほしい、と。最低でも億は出してくれ。そしたら毎月、4%分の現金を届けに来る、というわけ」
話は魅力的だった。密輸自体は半グレの男が仕切る。柳沢はカネを投げるだけでいい。
「それに、ヤツが『担保』になるからね」
柳沢が言う担保とは何か。話を持ってきた半グレの男の身元である。
「ヤツの身元を保証する人間が複数いる。仮に逃げても必ず『詰める』ことができる。だから安心してカネを投げたんだ」
旧知の仲であり、身元が割れている。しかも実兄や実父は有名人で、大きなビジネスを展開する成功者だ。ちなみに「詰める」とは、相手を追い込み、責任を取らせることを意味する。これが柳沢を金密輸に参入させる決め手となった。
「仕入れは香港だって言ってたよ。現地のブローカーと怒羅権がつながっていて、安く手に入る、と。香港には、ドバイ経由で入ってきていると言ってたね」
換金場所は御徒町だった。これも怒羅権のツテで、懇意にしている業者が請け負うから問題ないという。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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