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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第4回「シリコン製パッドから外交官まで税関との果てなき攻防を明かした」〉(2)「おもちゃや建築材料に」
だが、この手口には、致命的な誤算があった。金は原子番号79、比重約19.3—地球上の物質の中でもトップクラスに密度が高い金属で、X線をほとんど通さない。
どれだけ外側を精巧なシリコンで覆っても無駄なのだ。肉体やシリコンが淡い影として映る中、金塊だけが「真っ黒な塊」として不自然なほど明瞭に浮かび上がる。「腹部に巨大な金属の塊がある人間」として、モニターに映し出されてしまう。
ではなぜ、ある時期この手口が機能したのか。
理由は当時の検査体制にある。出発時の保安検査には以前から金属探知機が使われていたが、入国時の税関検査に金属探知機が導入されたのは17年の緊急対策以降のことだ。それまで全員が通る検査は目視と申告書の確認が中心で、水際は思いのほか手薄だった。
金属探知機が反応しても、「妊婦なので腹部を強くスキャンしないでほしい」などと訴えれば、税関職員の側に「妊婦を刺激したくない」という心理的な配慮が働く。目視と口頭確認だけで通過させてしまうケースが、実際にあったのだ。
だがしばらくすると、歩き方や腹部のせり出し方の不自然さから別室検査に回されることが相次いだ。
金密輸グループのボス、Mは言った。
「シリコンも、まあ、すぐに見つかっちゃいましたね」
別室では手荷物のX線検査と触診が待っていた。当てれば一目瞭然だった。
こうした体への装着が通用しなくなると、次の手口が生まれた。郵送だ。
おもちゃの内部部品を金に入れ替えて送る。銅板に見せかけた建築材料の中に金を混ぜ込む。車のエンジンやマフラーに加工して隠す手口も使われた。
船便を使うグループもあった。高級時計の内部に金を仕込んで送るのだ。
「それも、時間の問題でした」
Mは言った。果てなき攻防が続いたのだ。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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