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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第6回「4億8000万円の金塊は国庫へ黄金時代はこうして幕を閉じた」〉(1)ゴーン逃亡事件を受けて
プライベートジェットで国際便から国内便に「資格変更」すれば保安検査もノーチェック─。そんな話を鵜吞みにして、実行犯はマカオから沖縄へと金塊を運び込んだのだが、そこで誤算が‥‥。税関に発見された4億8000万円相当の金塊の行方は─。「資格変更」とは何か。
金塊112キロをプライベートジェットで密輸した事件の実行犯の1人は、こう証言した。
「香港から那覇に入港し、燃料をチャージすると同時に国際便から国内便に変更する手続きのことです。那覇で国内便に変えれば、羽田空港では国内便扱いなので税関の検査はありません」
実際の手続きはシンプルだ。地上支援業者がNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を通じて税関に変更を届け出るのだ。それだけで国際便が国内便に生まれ変わる。
それを狙った密輸の手口だった。見事に盲点をついていた。
加えてプライベートジェットには、もうひとつの特権があるのだと、実行犯の1人は言った。
「保安検査さえノーチェックなのです」
保安検査とは、乗客や手荷物に対するX線検査や金属探知機による検査のことだ。当時、プライベートジェットの保安検査は機長の判断に委ねられており、事実上ノーチェックで搭乗できた。知り合い同士が搭乗する自家用機では危険が生じにくいという理由からだ。
この盲点が塞がれたのは、カルロス・ゴーン元日産会長の逃亡事件を受けた2020年のことだ。実行犯の1人は続けた。
「このことをNは熟知していて、『調べることはまずない』と聞いていました。それを信じてしまった私たちが、大いに甘かったんです」
改めて経緯を振り返ろう。15年9月、A氏と組幹部の男が香港で会合を持ち、換金の依頼があった。その場で契約書まで交わされたという。組幹部の男とN氏は昔から付き合いがあり、「資格変更」の手続きさえ踏めばすぐにでも実行できた。あとはA氏が指定した換金日─そう、12月14日を待つだけだった。
換金日の数日前、実行犯2人が民間機でマカオ入りした。組幹部の男は日本での指示役のため、現地には来ない。
現地に金塊112キロをタクシーで運んできたのは、A氏の手先の男だった。3つのキャリーバッグに分散された金塊。実行犯の2人は自分たちのタクシーに積み替え、マカオの空港へ向かった。
マカオ空港到着。航空会社のスタッフにパスポートを渡す。すると─。
「その彼が手荷物から金が入ったキャリーバッグまで、すべて運んでくれました。なので私たちはノータッチです」
金塊の入ったキャリーバッグは、航空会社のスタッフにより貨物室に積み込まれた。実行犯の2人はパイロット、副操縦士とともにジェット機に乗り込んだだけだ。身の回りに金塊はない。傍から見ればただの搭乗者だった。
マカオの空港は何事もなく通過した。当然だろう。税関職員の検査もなく、申告の義務もない。そもそもここは、金の持ち出しが自由な国だ。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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