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記事全文を読む→金難民〜金塊密輸に魅せられた人々〜〈第6回「4億8000万円の金塊は国庫へ黄金時代はこうして幕を閉じた」〉(3)金塊は「犯罪組成物件」に
「よもや金がすべて没収されてしまうなんて」
実行犯の1人は言った。彼らの計算では仮に密輸がバレても修正申告すれば金は戻ってくる、はずだった。
「過去には私たちのようにプライベートジェットで10億円分の金を密輸した事件でも、罰金と消費税分を納税することで没収されなかった事例がありました」
だが今回は違った。罰金を払えば終わる「通告処分」(当時の罰金上限は500万円)では終わらず、裁判になったのだ。
一審では金の真の持ち主であるA氏の存在を、弁護士との相談の末に黙秘することにした。換金後の送金を迫るA氏には「もう少し待ってください」と伝えながら、裁判のことは内緒にしていた。
いわく、それが命取りになったのだ。
「後の祭りでした。法律の制度上、一審のときに真の持ち主が名乗り出て出廷しなければならないそうなのです」
二審から新たに所有者を名乗り出ることは、法律上認められていないのだ。
この密輸劇のハブとして暗躍し、今もマネーロンダリングを主とする「相対屋」として業界に根を張る保坂は言った。
「結果、金主が泣いたって感じですよ。没収されたら終わり。元本は保証されないじゃないですか」
果たして組幹部の男らは上告せずに収監される道を選び、二審で判決は確定。こうして4億8000万円相当の金塊は、そのまま国庫に収められることになった。
この事件が金密輸の歴史を変えた。
17年、財務省は「ストップ金密輸緊急対策」を発表し、組織的な摘発へと舵を切った。翌18年4月には改正関税法が施行される。罰金の上限は500万円から1000万円へ引き上げられ、密輸された金塊は「犯罪組成物件」─犯罪行為によって生じた物件─として没収される。かつては「払えば戻ってくる」だった押収品が、永遠に手元に戻らなくなった。
金密輸グループに出資者として関わっていた黒澤は言った。
「没収になってみんな一気に引いちゃいましたね。没収されることを加味すれば、何回、密輸を成功させればいいのか。それまで耐えられるかって話で」
例えば1億円分の金塊を密輸した場合、消費税8%分の利益は800万円だ。しかし没収されれば1億円が丸ごと消える。つまり没収1回分の損失を取り戻すには、単純計算で13回以上の成功が必要になる。
半グレからヤクザ組織へ。より大掛かりな手口へと進化した金密輸の黄金時代は、こうして幕を閉じた。
しかし─。
「やっぱオイシイからね。摘発も没収もされず確実に儲かる話があれば、またやりたいよ」
没収を機に足を洗ったという柳沢は言った。彼もまた「金難民」なのだろう。
高木瑞穂(たかぎ・みずほ)ノンフィクションライター。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に風俗や犯罪事情を取材、執筆。「売春島『最後の桃源郷』渡鹿野島ルポ」(彩図社)、「ルポ 風俗の誕生」(清談社Publico)など著書多数。
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