社会
Posted on 2023年10月22日 17:58

藩命で「偽金作り」も…発覚したら全責任を押し付けられて切腹した悲しい武士

2023年10月22日 17:58

 いつの世も、すさまじきは宮使えだ。明治維新直後に起こった「パトロン事件」を知っているだろうか。越後戦争(戊辰戦争)の際、明治新政府から大量の弾薬(パトロン)供出を命じられた加賀藩支藩・大聖寺藩が藩ぐるみでやった偽金騒動のことだ。

 首謀者は市橋波江という170石の武士。大聖寺は石高10万石ほどの藩だが、財政難にあえいでいた。当時はどの藩も新政府からの資金調達を命じられた上、歳入の使い方もチェックされ、財政は火の車だった。資金繰りに窮して、自ら廃藩を申し出るところもあったという。

 そんな中、大聖寺藩が手を染めたのが、藩をあげての偽金製造だった。藩は武士でありながら金銀細工に詳しかった市橋を、偽金製造プロジェクトの責任者に任命した。そして小判ではなく、二分銀を製造させた。

 市橋の偽金製造法は、今も残っている。まず一分銀や銀のかんざしなどを溶かし、不純物を加えて銀メッキを施す。そうしてできた偽金を俵に詰め込んで山代温泉に運び、数日間、温泉に沈めたという。温泉に沈めることで、偽金は本物のように古く見えるようになったといわれている。

 1枚の偽金は4倍の儲けを生んだという。そのため上方や越後では、大聖寺藩の偽金の評判は上々で、藩は上方に商店を作って大量に銀の道具を買い入れるまでになった。重臣の石川専輔などは利益を元に蒸気船を製造し、琵琶湖での舟運業に乗り出している。

 ここまで堂々と偽金作りをされては、新政府も動くしかない。だが、大聖寺藩の動きは早かった。摘発前に石川専輔を京都へ派遣して事態のもみ消しに奔走させ、最終的には全責任を市橋に押しつけ、切腹させたのである。まさに死人に口なし。市橋の自害で、藩は改易や減封といった処罰を免れた。まさに現代にもあるような、トカゲのしっぽ切りだ。

 だが藩のお偉方も、さすがに気がとがめたのだろう。その後、市橋の子息は倍の禄を与えられている。なお、今も地元・錦城山(大聖寺城跡)には、偽金を作っていた洞穴が現存している。

(道嶋慶)

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