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記事全文を読む→緊急追悼連載! 高倉健 「背中の残響」(21)公開後に事態は「意外な方向へ」
〈乗客1500人の生命をのせて、かつてない恐怖と緊迫危険がノン・ストップで疾走する──〉
関根忠郎が映画の新聞広告用に書いた惹句(宣伝コピー)である。期待感が高まったストーリーは以下である。
──新幹線ひかり109号に仕掛けられた爆弾は、時速80キロ以下になると爆発する。東京駅を出発したまま、名古屋でも、大阪でも止まることができない。
高倉ら犯人グループは、日本円で15億円相当のドルと引き換えに、爆弾の外し方を教えると宣言。臨月を迎えた主婦や、博多に護送される凶悪犯などを乗せた車内は刻一刻とパニックの気配に包まれる。
それでも金を手にした犯人側は、約束どおり爆弾の解除方法を書いたメモの居場所を伝えたが、あろうことか不慮の火災で焼失してしまった‥‥。
75年7月5日、映画は公開初日を迎えた。関根は坂上プロデューサーとともに、キャパ800人の「新宿東映」に向かった。そこで目にしたのは──、
「雨のせいもあったけど、半分も入っていないガラガラの状態。坂上さんもショックを受けて、たまたま近くにいた大学生をタダで入れてあげたくらい」
予想外の不振には、いくつもの原因が考えられる。まず映画の完成が公開の2日前だったため、試写などの宣伝が行き届かなかったこと。あまりに斬新なアイデアに、従来の東映ファンがついてこられなかったこと。アイドル映画が併映され、トータルで長丁場となってしまったこと‥‥。
脚本を手掛けた小野は、こう分析する。
「黒澤明の『七人の侍』(54年)は3時間以上もあったけど、一本立てだったから大ヒットした。東映もアイドル映画とくっつけないで、一本立てにしていたら結果は違ったよ」
高倉にとっては、映画がヒットしたら手にするはずだった「成功報酬」が露と消えた。それでも、高倉にとっても作品にとっても、意外な方向に事態は発展したと小野は言う。
「町工場のオヤジなんて地味な役柄を、健さんは淡々と演じて、今までにない味わいが出た。もともと筑豊の“川筋気質”を持つ人だから、命がけで仕事に打ち込むし、炭鉱の親方が坑夫に対してそうであったように、面倒見のよさが表れていた」
翌年、高倉は東映を離れ、同じ佐藤監督と組んだ「君よ憤怒の河を渉れ」(大映)を出発点として、新たな役者像を築く。また日本では不発だった「新幹線大爆破」は、フランスで公開されると3億円もの外貨を獲得する大ヒットになり、日本でも凱旋興行の形で陽の目を浴びた。
高倉にとっても生涯の財産となる名作であったが、そのラストシーンに渾身の力を込めたと助監督の岡本は言う。
「モノクロームの映像になって、最後は空港で射殺されてしまう。この死にざまの演技にこそ極限まで集中していました」
その銃撃シーンは、あるいは高倉健が新天地へはばたくための“華やかな儀式”でもあった。
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