芸能

緊急追悼連載! 高倉健 「背中の残響」(22)松田優作との共演秘話

20150205j

 少年はいつも、海の向こうに憧れていた。福岡の炭鉱町に生まれた少年は、いつの日か、密航してでも外国へ行ってみたいと願った‥‥。そんな幼き日の夢は、高倉健という一流の俳優になって実現する。世界の映画人が頂点と声をそろえる「ハリウッド」において、高倉健という爪跡を残すために──。

 時代が昭和から平成に移った89年、公開されたのが「ブラック・レイン」(UIP)だ。監督は「ブレードランナー」のリドリー・スコット、主演は「ウォール街」のマイケル・ダグラス、そして日本から準主演で招かれたのが高倉健(享年83)である。

 ニューヨーク市警の刑事・ニック(ダグラス)は、相棒のチャーリー(アンディ・ガルシア)とともに、日本人極道・佐藤(松田優作)の殺人現場を目撃する。逮捕した佐藤は指名手配犯だったため、日本に護送した。

 そして空港で警察に引き渡すが、それは刑事を装った佐藤の手下たちだった。大阪府警・松本警部補(高倉)の監視下に置かれた2人だが、捜査権がないにもかかわらず、強引に首を突っ込もうとする。手を焼く松本だが、事態は意外な方向へ転がっていった‥‥。

 本作で佐藤に扮した優作は、オーディションによって選ばれている。参加したのは萩原健一、根津甚八、小林薫、遠藤憲一、世良公則といった面々。

 修羅の形相を見せた優作は、一次の書類選考で落とされていたが、日本側スタッフから監督への説得もあり、オーディションを受けて逆転合格した。それでも──、

「俺は高倉健という俳優は認めないね」

 下北沢でバーを経営する大木雄高は、何度も優作に聞かされていた。かれこれ15年ほど親友の間柄だったが、どこが嫌いなのかを優作に聞いたという。

「健さんは1本の映画を撮ったら、1本の映画が撮れるくらいの休暇を取ってフラリと旅に出る。そんな悠悠自適な形が『日本の映画界の状況をほっぽっている!』と怒るんだよ」

 優作は「24時間、寝ている時だって映画のことを考えている」が口ぐせである。そんな優作と高倉の“危険な初共演”は、いざ始まってみたら一変したと大木は言う。

「優作は『俺、間違っていた‥‥』と言うんだ。まず健さんの人となりに惚れたと。さらに『健さんはすごい人だ』って繰り返していたね」

 高倉は過去にも「燃える戦場」(70年、ABCピクチャーズ)などでハリウッド経験がある。

「高倉健さんって、ありがたいよね。健さんが道筋をつけてくれたから、日本人の俳優というだけで尊敬される」

 優作がつぶやいた言葉である。

 優作だけではなく、マイケル・ダグラスも高倉健のカリスマ性に驚嘆した。大阪・京橋の野外ロケで、ファンが高倉に接する姿を見たダグラスは言った。

「あんなにファンが尊敬の念で接するなんて。アメリカではシンガーのブルース・スプリングスティーンくらいだろうね」

 やがて大木は、優作の招きで撮影中のハリウッドを訪ねた。優作は高倉に「東京から来てくれた大木さんです」と紹介する。

「すると健さんが、がっちりと握手して『ようこそ来てくださいました』と笑顔で返してくれたよ」

 意気投合した高倉と優作は、ハリウッドで貴重な体験を重ねた──。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    自分だけの特別な1枚が撮れる都電荒川線の「マニアしか知らない」撮影ポイント

    「東京さくらトラム」の愛称で親しまれる都電荒川線はレトロな雰囲気を持ち、映えると評判の被写体だ。沿線にバラが咲く荒川遊園地前停留所や三ノ輪橋、町屋駅前は人気の撮影スポット。バラと車両をからめて撮るのが定番だ。他にも撮影地点は多いが、その中で…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

    テレビ業界人が必ず見ているテレビ番組「次のブレイクタレント」「誰が最も面白いか」がわかる

    「業界視聴率」という言葉を、一度は聞いたことがあるはずだ。その名の通り、テレビ業界関係者が多く見ている割合を差すのだが、具体的なパーセンテージなどが算出されているわけではない。いずれにしても、どれだけ業界人が注目して見ているかを示す言葉だ。…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
堀内恒夫委員長の発言が…巨人・菅野智之が15勝しても沢村賞「該当者なし」になる「ある条件」
2
「ZIP!」も「ウイニング競馬」も長期欠席…ジャングルポケット・斉藤慎二に「不穏な理由」
3
「ミヤネ屋」宮根誠司が女子アナとゲストを困らせた「ニュースが理解できない」事件
4
【ロッテの大問題】「佐々木朗希は退化している」高木豊がズバリ断言した「欲とヤル気のなさ」
5
江本孟紀が断言!阪神・佐藤輝明の赤っ恥「ヘディング失策」は「スーパースターになるチャンスだ」