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記事全文を読む→緊急追悼連載! 高倉健 「背中の残響」(22)松田優作との共演秘話
少年はいつも、海の向こうに憧れていた。福岡の炭鉱町に生まれた少年は、いつの日か、密航してでも外国へ行ってみたいと願った‥‥。そんな幼き日の夢は、高倉健という一流の俳優になって実現する。世界の映画人が頂点と声をそろえる「ハリウッド」において、高倉健という爪跡を残すために──。
時代が昭和から平成に移った89年、公開されたのが「ブラック・レイン」(UIP)だ。監督は「ブレードランナー」のリドリー・スコット、主演は「ウォール街」のマイケル・ダグラス、そして日本から準主演で招かれたのが高倉健(享年83)である。
ニューヨーク市警の刑事・ニック(ダグラス)は、相棒のチャーリー(アンディ・ガルシア)とともに、日本人極道・佐藤(松田優作)の殺人現場を目撃する。逮捕した佐藤は指名手配犯だったため、日本に護送した。
そして空港で警察に引き渡すが、それは刑事を装った佐藤の手下たちだった。大阪府警・松本警部補(高倉)の監視下に置かれた2人だが、捜査権がないにもかかわらず、強引に首を突っ込もうとする。手を焼く松本だが、事態は意外な方向へ転がっていった‥‥。
本作で佐藤に扮した優作は、オーディションによって選ばれている。参加したのは萩原健一、根津甚八、小林薫、遠藤憲一、世良公則といった面々。
修羅の形相を見せた優作は、一次の書類選考で落とされていたが、日本側スタッフから監督への説得もあり、オーディションを受けて逆転合格した。それでも──、
「俺は高倉健という俳優は認めないね」
下北沢でバーを経営する大木雄高は、何度も優作に聞かされていた。かれこれ15年ほど親友の間柄だったが、どこが嫌いなのかを優作に聞いたという。
「健さんは1本の映画を撮ったら、1本の映画が撮れるくらいの休暇を取ってフラリと旅に出る。そんな悠悠自適な形が『日本の映画界の状況をほっぽっている!』と怒るんだよ」
優作は「24時間、寝ている時だって映画のことを考えている」が口ぐせである。そんな優作と高倉の“危険な初共演”は、いざ始まってみたら一変したと大木は言う。
「優作は『俺、間違っていた‥‥』と言うんだ。まず健さんの人となりに惚れたと。さらに『健さんはすごい人だ』って繰り返していたね」
高倉は過去にも「燃える戦場」(70年、ABCピクチャーズ)などでハリウッド経験がある。
「高倉健さんって、ありがたいよね。健さんが道筋をつけてくれたから、日本人の俳優というだけで尊敬される」
優作がつぶやいた言葉である。
優作だけではなく、マイケル・ダグラスも高倉健のカリスマ性に驚嘆した。大阪・京橋の野外ロケで、ファンが高倉に接する姿を見たダグラスは言った。
「あんなにファンが尊敬の念で接するなんて。アメリカではシンガーのブルース・スプリングスティーンくらいだろうね」
やがて大木は、優作の招きで撮影中のハリウッドを訪ねた。優作は高倉に「東京から来てくれた大木さんです」と紹介する。
「すると健さんが、がっちりと握手して『ようこそ来てくださいました』と笑顔で返してくれたよ」
意気投合した高倉と優作は、ハリウッドで貴重な体験を重ねた──。
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