「ここ、ほんとに京都か…!?」
昼の錦市場、新京極、寺町界隈を歩いた観光客が思わず口にしたひと言だ。お土産店の軒先で聞こえるのは中国語、英語、韓国語…。かつて修学旅行生や地元の買い物客でにぎわった京都の繁華街では今、日本人の姿が急激に減っている。
それもそのはずだ。京都市が6月11日に発表した2024年の観光総合調査によると、京都を訪れた外国人観光客数は1088万人(前年比53.5%増)で、過去最高を記録。さらに宿泊者数でも、外国人が日本人を初めて上回ったのだ。
一方で、日本人観光客は前年比4.6%増の4518万人と、ほぼ横ばい。京都は「日本人観光客の街」から「インバウンド専用都市」へと変貌しつつある。
夕暮れの木屋町や先斗町を歩いても、その異変ははっきりとわかる。かつては仕事終わりの会社員や観光客でにぎわった居酒屋や小料理屋が姿を消し、今や外国語の看板と海外向けメニューの店ばかり。
「居酒屋も定食屋も減って、どこも高い観光価格。地元の人はもう来なくなった」
そう言って嘆くのは、20年以上もこの地で飲食店を営む男性である。
そしてもうひとつ深刻なのが、「夕飯難民」化する地元の会社員やOLだ。近隣オフィスで働く30代の女性会社員が語る。
「木屋町や烏丸に住む人達にとって、仕事終わりに気軽に飲みに行ける場所がないんです。気付いたらホテルとカフェだけになり、深夜まで営業しているのはコンビニぐらい。飲食店の灯りはほとんど消えています」
祇園ではかつてのクラブやラウンジが入っていた雑居ビルが次々と売却され、跡地には素泊まり専門ビジネスホテルの建設ラッシュ。夜の街だったはずの祇園が「寝るだけの街」へと姿を変えている。
急激なインバウンド需要の高まりと地価上昇で、家賃は高騰を続ける。次に入る店は見つからず、空きテナントが激増中で、ビル一棟丸ごと空いているケースも散見される。
観光客数だけを見れば、大盛況。だがその裏側では「京都で働き暮らす人たち」の居場所が失われつつある。
(京野歩夢)