今年も日本三大祭りのひとつ「祇園祭」の季節がやってくる。1カ月後に本番を控えた京都の街ではすでに準備が始まり、例年どおりの賑わいが予想されている。しかし、その華やかさの裏で、地元商店の間には静かなため息が広がっている。
「昨年もあれだけの人が来ていたのに、ウチの店には誰も入ってこなかったんですよ」
そう語るのは、四条通沿いで老舗飲食店を営む店主だ。祇園祭といえば、山鉾巡行や夜店など、町全体が祭り一色に染まる一大行事。しかし近年、その賑わいの主役が変わりつつあるのだ。続けて言うには、
「来ているのはほとんど外国人観光客。写真を撮るだけで、買い物も飲食もしない。結局、お金が全く落ちないんです」
事実、地元では祇園祭の時期になると、営業を見合わせる店が少なくない。祭り目当てに訪れる外国人観光客の多くが、鉾だけを見てすぐに帰ってしまい、消費行動につながらないのだ。その背景には現金決済のみ、日本語表記のみ、立ち食い形式など、従来の屋台文化が今のインバウンド客には馴染みにくいという問題がある。
観光客数は増えているにもかかわらず、地元経済への恩恵は薄い。むしろ、インフラ整備や清掃などの費用ばかりが自治体にのしかかっているのが現実だ。
「観光都市としての名はありますが、地元には何も残らない。もう『祇園祭は誰のためにあるのか』を見直す時期なのかもしれません」(前出・老舗飲食店店主)
賑わいの陰で、静かに疲弊していく地元商店。伝統行事のあり方が問われている。