「当時16歳で浴びるほどのお酒を飲まされ、お客さんとの混浴を強いられた。これが本当に伝統文化なのか。今一度、考えていただきたい」
切実にそう訴えたのは、元舞妓の桐貴清羽(きりたか・きよは)氏だ。2022年、旧Twitterに投稿されたこの告発は瞬く間に拡散され、舞妓の世界に潜む闇の実態がクローズアップされた。
それから3年。桐貴氏は弁護士らとともに「舞妓と接待文化を考えるネットワーク」を立ち上げ、未成年飲酒や長時間労働、性被害などの問題に対し、改善を強く要求している。
6月10日放送の「ABEMA Prime」では、当時の過酷な状況をこう振り返っている。
「携帯電話は持てず、連絡手段は手紙か公衆電話。働きづめで相談する時間はなく、悩みを外に漏らすこと自体がタブーでした。弱音を吐けば『根性がない』と言われ、胸にしまうしかなかった」
「伝統」を支える現場には、大きな影響が出ている。京都には祇園甲部、宮川町、先斗町、祇園東、上七軒の「五花街」があるが、現在、舞妓の人数は40人を下回り、過去最低水準だという。現地の関係者はこう語る。
「彼女の告発以降、仕込みさん(見習い)が一斉に辞めてしまいました。今は芸妓さんばかりで舞妓の数が足りず、花街の運営が厳しくなっています」
舞妓・芸妓の存在は、踊りや着付け、料亭文化など、多くの関連産業を支える。女性が活躍できる仕事として肯定的に見る声はあるが、慣習の中に違法性や人権侵害が含まれているのであれば、見直しは避けられない。
伝統とは、守るだけでなく「変えていく」努力も必要なもの。「舞妓離れ」が進む中、花街文化はどこへ向かうのか。今こそ過去のやり方を見直し、未来へとつなげる道を模索すべき時かもしれない。
(京野歩夢)